第61話 アーレンバリとは……
「あ、王子おはよ」
「王子、腕は大丈夫なのか?」
「女の子守るなんて王子かっこいいじゃん」
普段話もしないような奴から声をかけられる。揃いも揃ってみんな王子王子と。
……いやいや、ちょっと待て。
王子様ってなんだ?俺知らんぞ。
「なぁ、俺が休んでる間に一体何が……んん?」
休まずに学校に来ていた三人に聞こうとして振り返ると、紗雪は両手で真っ赤になった顔を覆い、雪花は近くの机に手を置いてプルプルと震えていた。そんな中、エレナはスマホをいじっていたかと思えば、そのスマホを俺に向けて何かを再生した。
「はいどうぞ」
【『自分の思い通りにいかないからって八つ当たりみたいな事しないでよ!悠君はね、悠君はアタシの王子様なんだからっ!!』】
んなっ!これは!?
「わぁー!ちょっとエレナちゃん!?なんでそんなの録ってるの!?」
「いえ、何かの証拠に使えるかと思いまして。役に立ちました!」
「たってないから!うぅ、恥ずかしい……」
「えっと、これは一体なんなんだ?」
「私が説明しましょう……ぶふっ」
あ、雪花復活……でもないか。
で、要約するとこうだ。
【斎藤にむかついた紗雪が勢いで言った】
ってことらしい。しかもクラスメイトのいる前で。
それでこの王子呼びか。
──ホント勘弁して!
しかも何か俺が解決したみたいになってるけど、俺何もしてないからね!?
ただ腕痛めて寝てただけだから!
全部いつの間にか雪花達が解決してたんだけどぉ!
なぜだ……。
気まずいったらありゃしない。
説明──しても無駄なんだろうなぁ。
はぁ……。
そしてその日の朝のSHRで告げられた連絡事項が二つ。
一つは、斎藤は都合により退学するって事。
さらば斎藤。お前の事はきっと2ヶ月位で忘れる。
もう1つは、「橋本ちょっと職員室まで来い」だそうだ。
腕痛いんで今度で……だめ?はい。行きます。
その後は、一時限目全部使ってこってりとしぼられた。
まずは暴力行為を受けたならちゃんと言えってこと。それはすぐに終わったけど、メインは女性関係について。
その話が始まると、デスクを挟んで向かいにいた睦月が挙動不審になり、言い訳として【付き合ってるのと好きなのは雪花だけ】って担任に言うと、今度は悲しそうな顔になった。
今度たくさん構ってあげないとだな。
って俺も大分染まってきたなぁ……。
そして最後に担任が今日一番の真剣な顔をして言ったのは、
【いいか?アーレンバリを怒らせるな。わかったか?あそこの家はヤバい】
だった。
いや、エレナお前どんだけなの!?
ホントに何者!?
後でちゃんと聞いとかないとヤバイかな?
けど……怒られると喜ぶんですけど、コレはどうしたらいいんですかね?
そんな事を考えながら教室に戻ると、すぐにエレナが寄ってきた。
「ん?どした?」
そして俺の袖をひっぱり耳元に顔を寄せてくる。
「悠聖さんだけは、ワタシの事どれだけ叱ってくれてもイイですからね?」
!?
「おまっ……まさか!」
「盗聴はしてませんよ?ただ、職員室にはお知り合いがいるんです。ふふっ」
気を付けよっと……
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