第45話 逃がさない
「ちょっとゆう君どういうこと?」
ホントどういうことでしょうね?
「悠聖君。あの子もメンバーに入れるの?なら、ちゃんと審査しないといけないわ」
何のメンバー!?ちょっと!ここ教室だから変な事言わないでくれよ?……ん?審査?
「橋本君まじハンパない。ヤバい。ちょっとカッコよく見えて……はこないけどなんかヤバい」
藤田さん。いや藤田、お前は黙れ。
今はHRが終わってすぐの休み時間に入った途端に双子が俺の席にやってきた。
エレナ(名前覚えた)は担任につれていかれた為、今は隣にいない。
その為、俺の座っている席がこの教室最大の注目の的になっている。おかしい。ちょっと前までは、冴えない暗いオタクの人扱いだったはずなのに。とりあえず誰とも目線を合わせないように下向いておこう。
「いや、冬休みに入ったばかりの時にな?ラノベ買いに行くついでにデパート寄ったら迷子の子がいてさ、その子の親を一緒に探してたらあの子の妹だったってだけだよ。ほら、俺も妹いるしさ。その後はそれっきりで、名前もさっき初めて知ったし」
「迷子って!ホントにお人好しなんだから!」
「姉さんは人の事言えないんじゃないかしら?そのお人好しに助けられたのは誰だったかしらね?」
「さっすが悠くん!だから好き!」
嬉しいけどなんか違う。
「なるほど、あなたは悠聖さんが好きなんですね?」
「えっ?」
紗雪ともう一人の声に反応して顔を上げると、紗雪と雪花の後ろにエレナがいた。
もう戻ってきてたのか。
「教科書は一緒に見れますけど、ノートがないので先生から貰ってきたんです。ところでお二人のお名前はなんですか?」
「アタシは中村紗雪だよ~。よろしくね!で、こっちは双子の妹で、」
「い、妹の雪花……です。そしてっ!悠聖君の恋人でもありますです。よ、よろしくお願いしますね。エリ、エレ、エル?……エ☆○△さん」
なんでそんな緊張してんの?外国人だから?てか、雪花も名前覚えてねーのか!それっぽく言ってごまかしやがった!
「エレオノーラですよ。自己紹介でも言いましたけど、長いのでエレナでいいですから。それに、向こうでも日本語で過ごしてましたから」
「そう……わ、わかったわ」
少し顔を赤くしてそっぽ向く姿がちょっと可愛く見えた。
「それにしても、悠聖さんはずいぶんとモテモテなんですね?」
「へ?俺?あ、いやぁ。そんな……」
「あっ!そういえば妹を助けて貰ったお礼がまだでしたね?」
「え?いや、いいよ。別にお礼がほしくてしたわけじゃないし」
「いーえ、だめです。ちょっと失礼しますね?」
チュッ
は?今頬に?なにした?
「ちょっ!ちょっとエレナさん!?何してんの!?しかも人前で!」
目の前で紗雪が憤慨している。
珍しく雪花も目が見開いている。
「何ってお礼のキスですよ?さすがに口には遠慮しましたけど」
「なっ!当たり前じゃない!」
そうか、俺はキスされたのかー。はぁ!?キス!?なんで!?
「ちょっといいかしら?さっき私の恋人だと言ったばかりなのにどういうつもりかしら?」
雪花が俺の側に立ってエレナさんを睨む。あっ、これはさすがに怒ってるか?
「──悠聖さんがデパートで妹を肩に乗せて励ましながら必死に両親を捜している姿は、それはそれはとても魅力的でした。お礼も受け取らずに去っていく姿を見て、あぁ、これがきっと一目惚れなんだなぁと。ふふっ」
ちょっとまて!チョロイにも程があるだろ!なんだこれ?俺のまわりどーなってんだ!もう勘弁して!
「そう、ならちょっとこっち来てもらえるかしら?少しお話が必要みたいね。姉さんも来てもらえる?」
「当たり前だよ!もう!」
「わかりました。あ、悠聖さん?」
ひいっ!なんか目が怖いっ!
「な、なんでしょうか?」
「ワタシの祖国の家族は代々狩りをして生活してきたそうです。まぁ、今ではやらなくなったみたいですが……」
「は、はぁ」
「その教えの中に、一度狙ったものはどんな事をしても逃がさないというものがあるんです」
「えーっと、え?」
「カクゴしていてくださいね?」
もうヤダ……
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