第36話 まだないしょ
家までの道のりで気になった事がある。
俺は泊まることを言ってあるが、まさか二泊になるとは思わなかったのだ。
まぁ、母さんには怒られるだろうけど、それはまぁいい。問題は雪花だ。
雪花も昨日アパートに泊まったのだが、大丈夫なのだろうか?俺の記憶ではスマホを触っている姿を見た記憶がない。
「なぁ、昨日泊まったの大丈夫だったのか?雪路さん怒らない?」
「気にしなくていいわ。さっき姉さんからメッセが来たのだけれど、なんとかごまかしたみたい。あなたに会いに行く事は姉さんに言ってきたし、上手くやったんじゃないかしら?」
「それならいいんだけどな」
「何かきになるの?」
「いや、俺にもお前にも何も連絡来てないから、何て言ってごまかしたのかが気になってな」
「確かにそうね…まぁ、帰ればわかるんじゃないかしら?それにしても、お前って呼んだわね?」
「あ、ダメだったか?」
「いいえ、その逆よ。なんだかあなたのモノって感じがして凄くイイわ」
赤くなった頬に手を当てて、とろけるように微笑んでいる。
「あ、そうですか」
Mか?Mなのか?
でも、たしかに昨日は……
「何を考えているの?ちなみにこんな事言うのはあなただからよ?他の人が軽々しくお前なんて呼んだ日には視線でメッタ刺しだわ」
「それは怖いな」
━━━━━━━
そんな話をしてるうちに家の前につく。
「じゃ、入るぞ?」
「えぇ」
まだ朝も早いので一応静かに扉を開けて中に入る。
「「ただいま」」
「「「「おかえり」」」」
んをっ!?
全員起きてるのか!?早くないか?思わずスマホで時間を確認する。
7時半。うん、のんびり歩き過ぎたかな?
リビングに行くと4人が朝食を食べているところだった。奈々はむすっとしてて、なぜか紗雪は顔を青くしているが
「あ、えーと…」
「母さんから言うことは、避妊はしっかりね!だけよ。後は雪路さんから聞いてね」
「は?え?」
「悠聖君。今回の事は僕達も勘違いするような事を家で話したから悪かった所もあるし、紗雪から話は聞いていたから怒ってはいないよ。だからそんなに身構えなくてもいい。ただ、今度からはちゃんと連絡をしてくれると助かるかな」
「…はい。わかりました」
「それと雪花」
「なにかしら?」
「なんとゆーか、もう少し節度をもった行動をしてくれないか?紗雪から話を聞いて、父さんはとても複雑な気持ちだったよ」
「…ちなみに姉さんは何て言ってたの?」
「ご、ごちそーさま!アタシ部屋行ってるね!」
「姉さん待ちなさい。で、お父さんと弥生さんはなんて聞いてたの?」
雪花の手が紗雪の服を掴んで離さない。
紗雪は諦めたのかおとなしく座っているが、額にじっとりと汗をかいていた。
「あれだろ?ホントの兄妹だと思って一度別れて諦めかけたけど、それが違うとわかったらいてもたってもいられなくて悠聖君の友達のとこに、家を出る前から泣き叫びながら押しかけて連れ去ってそのまま…えーっと、その、あれだろ?」
「そう。そう聞いていたのね」
「違うのか?」
「いえ、ほぼその通りよ。今度からは気を付けるわ。迷惑かけてごめんなさい」
「じゃあ、雪路さん?これでこの話はおしまいってことね?」
「あぁ、それでいいよ」
「じゃ、二人ともとりあえず着替えてらっしゃい。ご飯まだでしょ?準備しておくから着替えたらおりてきなさい」
「わかった」
「ありがとうございます。後姉さんちょっと来て」
「ひいぃっ!」
「奈々もついてく」
結局四人で二階に上がっていく。
「じゃ、悠聖君は着替えたら私の部屋に来てね。姉さんと奈々ちゃんは一緒に来てちょうだい」
━━━━雪花視点
姉さんと奈々ちゃんを連れて自室にはいってきた。姉さんを尋問しないといけないわね
「さて姉さん、何か言い訳はあるかしら?」
「いやぁ~アタシもテンパっちゃって」
「それにしたってもう少し誤魔化してくれてもいいじゃない。あんな言い方じゃ、いかにもって感じだわ」
ほんとにストレートに言い過ぎだわ!せめて友達のところに行ったとかなら良かったのに。
…ダメね。私、友達いないもの。まさかこんなところで弊害になるなんて…
「じゃあ…してないの?」
「………わ」
ここで嘘はつけない。これからの為にも
「え?なんていったの?」
「したわ。ちゃんと彼に愛してもらったわ」
「……っ。そっかぁ。したんだ。(いいなぁ)」
うつむきながらボソッと呟いているけど、確かにいいなぁって言ったのは聞こえたわ。
そうよね。姉さんも好きなんだものね。
「ずるいっ!」
えっ?奈々ちゃん?
「奈々だっておにぃがいいのに!奈々だってホントに妹じゃなかったら相手にしてもらえるのに…」
奈々ちゃんが彼を好いていたのはわかっていたけどここまでだったの?奈々ちゃんには言うべきではなかった?この感じ、ついこないだの私みたい。このままだと暴走してしまいそうね…。彼はどうなのかしら?奈々ちゃんは同じ女から見ても可愛いしスタイルもいいし。それに姉さんも何年も片思いしていた相手だから諦めきれてないみたい。なら…
「いいんじゃないかしら?」
「「えっ?」」
「姉さんも奈々ちゃんも悠聖君の事が好きなのでしょう?ならみんな一緒に彼を愛して行けばいいのよ。一対一が常識?兄妹はだめ?そんなの知らないわ。私はもう絶対に彼から離れない」
私はもう前の私じゃないの
「雪花さん、奈々もいいのかな?」
「ちょっとせっちゃん?何言ってるの?」
「姉さんは諦められるの?何年も前から好きだった王子様なんでしょ?」
「それは…だって…」
「私がいるから?そんなの関係ないわ。きっと彼なら皆を愛してくれるわ。私だってその一人だもの」
「えっ?それってどーゆう?」
「それはまだないしょよ」
コンコン
「来たぞー」
あら、来たみたいね。
「この話はまた今度。けど、簡単なことよ。よくラノベや漫画であるような、彼が自分本位のハーレムを作るんじゃないの。私達が彼の為のハーレムになるのよ」
「「ハ、ハーレム!?」」
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