第34話 呼び出し
目が覚めると朝だった。隣にはよくある表現だけど、産まれたままの姿の睦月がいる。また泊まってしまった。
とゆーか、昨日はなんだかよくわからないうちにそんな感じになって、朝方まで流されるままに致してしまっていた。時間を確認しようとしたがスマホが見当たらない。
「おはよ、ゆうちゃん」
「あ、あぁ」
「どぅしたの?」
「いや、スマホが無くて」
「ここにあるよ。どーぞ」
なんで睦月が俺のスマホを?寝ぼけてどっかに置いたかな?
時間をみるとまたしても昼前だったので、今回は帰ろうとすると睦月に止められた。
「ご飯くらいは食べて行ってね?」
断る理由も無かったため、頷いてリビングでまっていると
ピンポーン
ん?宅配便?客?
「あ、来たかな?」
「誰か来る予定だったのか?」
「うん?予定は無かったよ?あたしが呼んだの」
「俺いても大丈夫?」
「全然大丈夫。むしろいてほしいかな?」
なんだ?だれだ?
「じゃ、お出迎え行ってくるね」
そう言って玄関に向かっていく姿をみていたらすぐに踏みしめるような足音が聞こえてきた。なんだ?
ダダダタッ…ガラッ!
「悠聖君!!」
は?
雪花?
え?
なんで?
目の前には目を赤く腫らした雪花と、その後ろでニコニコしている昨夜の名残で着崩れして薄着の睦月が立っていた。
「な、ど、どうしてここに?」
なぜここに雪花がいるのかわからずに聞いてみるが、それには答えてくれずにまっすぐ俺の所に向かってきた。
「先生から電話来たときは信じられなかったけれど、ホントにいるとは思ってなかったわ。なんでここにいるの?昨日もいたんでしょ?私のせい?私がちゃんと確認もしないであなたを拒絶したせい?ねぇ、ねぇ!」
俺の肩を掴みながら言う雪花の顔は、目の下の隈がひどく、髪もボサボサでまるで別人のようになっていた。
「雪花。とりあえず落ち着いてくれ。先生から電話ってなんだ?」
手を握ってゆっくり優しく話しかけると少しずつ落ち着いてきて、話始めてくれた。
「朝、先生から電話があったの。なんで番号知ってるか聞いたら悠聖君のスマホを見たって言ってて」
スマホが置いた場所に無かったのはそのせいか。雪花越しに睦月を見るとニコニコしたままだ。
「それで悠聖君と先生が一緒にいるってわかったら、美術準備室の事もあったからもうどうしたらいいのかわからなくなってしまって…そしたら先生が住所を教えてくれたから来たの」
「それでなんで私のせいってことになるんだ?」
「先生が言ったの。私のおかげで悠聖君と…その…男女の関係になれたって…ねぇ、ホントなの?」
なんで言ったんだ?何を考えてるんだ?睦月を見てみても今だにニコニコしてるだけでさっぱりわからない。
「…あぁ、男女の関係って話ならホントだ。だけど、雪花のせいじゃあない。確かにきっかけはフラれた事かもしれないけど、こうなったのは俺が弱いせいで、そこに睦月が側にいてくれて弱い俺を支えてくれたんだ。でも昨日、誤解なのがわかったら雪花との間で揺れてしまってその事を話にきたんだ」
「そんな……」
雪花の目から色が失われていく
そこではじめて睦月が動いた。
「そして、昨日も一緒に寝たんだよ。雪花さん」
色の無い目が睦月に向かう
「でもね、ゆうちゃんはまだ雪花さんの事が好きなの。あたしだけじゃだめなの」
「だけ?」
「あたしはね、二番目でもいいの。んーん、二番目って言うのは変だね。雪花さんの手が届かないところであたしがゆうちゃんを支えていたいの。ゆうちゃんは雪花さんといるときが一番安心してるから」
「私が一番…でも、悠聖君二股かけるの?」
「全然違うよ。お互いに隠れるから二股とか浮気になるの。でもあたし達はゆうちゃんの事が好きで、ゆうちゃんもあたし達の事をきっと大事にしてくれる。そしてそのゆうちゃんをあたし達でお互いの弱いところを補いながら支えていくの。これって素敵な事だよね?みんな幸せになるんだから」
「素敵…幸せ…。ねぇ、悠聖君は私の事、今でも好きでいてくれてるの?」
涙を浮かべて虚ろな目で聞いてくる。
「あぁ、好きだよ。俺は雪花の事が好きなんだ」
「うれしい……証明してくれますか?」
「わかったよ」
そう言って雪花にキスをした。
そのキスに雪花も答えてくれた。
「じゃあ、これからよろしくね。雪花さん。一緒にゆうちゃんを幸せにしようね。ほらゆうちゃん、もっとキスしてあげて?」
「はい…。悠聖君もっとしてくれる?」
「あ、あぁ…」
結局、睦月が昨日言った通りになっちゃったな。
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