第32話 真実と拒絶
まさかそんな事があったなんて思いもしなかった。こんなに心配かけてたんだな。
「何も連絡入れないでホントにすまなかった。後、雪花ももう気にしなくていいよ。一晩考えてもう諦めがついたし、自分の中でも整理ついたから大丈夫。俺なんかがごめんな?」
「そんなっ……」
「おにぃ…」
「悠君…」
「さて、とりあえず皆は飯食ったのか?」
全員首を振る。
「なら、今帰りに色々買ってきたからそれ食うか!1日遅れのクリスマスってことでな」
そう言いながら台所に行ってビニール袋を持ち上げた。中にはチキンやらピザがはいっている。それをソファーの前のテーブルに広げていく。
「さ、食べるか!」
四人でそれを食べていくのだが、いかんせん会話がない。まるでお通夜のようなのだ。そんなとき奈々の口が開いた。
「なんかおにぃ変だよ?」
「ん?なにがだ?」
「だって…やけに元気とゆーか、フッ切れすぎってゆーか」
「あー、まぁ、いろいろとな」
さすがに睦月のおかげで…。なんて言えないからなぁ。
結局特に会話もなく昼食も終わって、みんな俺を待ってたせいか、眠いみたいで部屋に帰って行った。俺はさっき回した洗濯物を持って自分の部屋に干すために上がっていった。
「えっ?」
部屋に入ると紗雪がいた。
「悠君やほ!」
「どうしたんだ?」
「ちょっと話があって…」
「雪花のことか?」
「うん、まぁね~。せっちゃんはフッたって言ってたけど悠君的にはどうだったのかな?って思って」
「その通りだよ。紗雪にはわるいけど、雪花に告白してフラれた。ただそれだけだ」
「悠君はそれでよかったの?」
「良かったも何もフラれたんだからどうしようもないだろ?」
「けど、だって…」
コンコン
だれだ?
「あいてるぞ」
「悠聖君ちょっと話が…っ!姉さん?」
「雪花はどうしたんだ?」
「あ、あの、話したく…て……ね。昨日の夜何があった…の?奈々ちゃんじゃないけど、私も何か変な感じがして…」
「……本当に変わった事は何もないよ。気にしなくていい。吹っ切れるきっかけがあったってだけだから」
「そ、それじゃあ、もう昨日の事は…」
「もう過ぎた事なんだから雪花も気にするな」
「過ぎた…事………っ!ふぐうっ…ふえっ……うぇぇぇん」
フラれたの俺なのになんで泣く!?おれがあたふたしてると紗雪が口を開いた。
「辛いよね?せっちゃん。あの事話そ?」
ブンブン首を横にふる雪花
「言いたくないのわかるけど、だけどこれじゃあんまりだよ!」
「は?ちょっとまて?なんの話をしてんだ?」
そうして雪花が止めるのも聞かずに俺に話した内容は衝撃的なものだった。俺をフッた理由が実の兄妹は結ばれないからというものだったのか…。
にしても、やけに冷静に話を聞いてられるのも睦月のおかげなのかな?
「は?兄妹?血の繋がった?俺たちが?まさかそんな…」
「た、確かにリビングでお父さん達が話してるの聞いたんだもん。ホントは私も悠聖君の事大好きなんだもん!だけど…」
もんって。さっきから雪花の話し方がやたらと子供っぽいのが気になるんだが…。
そんなことより今は兄妹疑惑問題だな。
俺はスマホをだして母さんにメッセージを送った。大事な話があるから早く帰って来て欲しいことと雪路さんも一緒にいて欲しいこともだ。
「今母さんにメッセ送った。はっきりと聞こう。俺たちだけで抱えるべき問題じゃない」
「えっ!?悠君ホントに!?」
「聞くの怖いよぉ…」
「もう送ったからな。今更取り消しは出来ないぞ」
その後はただただ沈黙で母さん達が帰って来るのを待つだけだった。幸い、返信はすぐに来て、打ち合わせがもう少しで終わるからまっすぐ帰ってくるそうだ。
ガチャ
玄関から音がした。
「よし、二人ともいくぞ」
降りる前に奈々の部屋を覗いたが爆睡してるみたいだ。良かった。奈々にはキツいだろうしな。
「おかえり、母さんに雪路さん。」
「ただいま。一体どうしたの?大事な話なんて。まさか妊娠!?」
「違うから。茶化さないでくれ」
「あら怖い。ホントに大事な話なのねぇ。じゃ、雪路さん?ちゃんと聞きましょうか。せれで何かしら?」
リビングの六人掛けテーブルに五人がついた。
「まどろっこしいのは苦手だからハッキリ聞くけど、俺たちって血が繋がった兄妹なのか?」
「「……………はい?」」
「ごまかすなよ?こないだリビングで母さん達がそんな話を聞いてるのを雪花が聞いてたんだ」
隣では雪花がうつむきながら震えている。その手をそっと握ると少し震えがおさまったみたいだ。
「えーっとね?それ、今作ってるアニメの話よ?」
「………は?」
「えっ?」
「はぁぁ?」
「ほら、これ台本よ?」
そしてだされた台本を見ると
【俺の恋人は実姉でした】
と書かれていた。
「えっ?じゃあ俺たちは?」
「ただの義理の兄妹よ?だいたいそんなアニメみたいな話あるわけないじゃなーい♪」
と、ケラケラと母さんは笑っていた。
俺たち三人はただ呆然とするばかり。なんだこれ?なんでこーなった?てかそんな話を家でするなよ!そんなことさえしなければ俺は今頃雪花と…。って考えた所で睦月の顔が思い浮かんだ。俺は…どうすればいいんだ?
すると、雪花がすごい勢いで立ち上がり俺の手を引いて走り出した。
「えっ!せっちゃん!?」
紗雪が呼び止めるがお構いなしに階段を上がって雪花の部屋に連れてこられた。
「雪花一体どうしたんムグッ」
「ンチュ…レロ…チュ…チュッ…はぁ、悠聖君と兄妹じゃなかった!好きになるの駄目じゃなかった!好きっ!好きなの!大好きなの!過ぎた事なんて言わないで!もうあなたじゃなきゃだめなの!」
雪花……俺も、俺だって……
(ゆうちゃん♪)
!? 睦月の顔がちらつく。初めてを捧げてくれた時の幸せそうな顔。仕事に行くときの照れた顔。
気がついたら雪花の肩を押して遠ざけていた。
「悠…聖君??」
驚愕したような顔が見える。思わず抱き締めたくなるけど耐える。このまま抱き締めたらとまれなくなる。最低な男になってしまう。
「ごめん、雪花。少し…時間をくれ」
そう言って逃げるように部屋を出た。扉に背をあずけると「どうして?どうして?」と、むせびなく声が聞こえるがどうすることもできない。それに耐えて自分の部屋に行くとスマホにメッセージが来ていた。
『ゆうちゃん。お仕事おわったょ~♪お家ついた?今日はどこも行かないからいつ来てもいいからね?なんちゃって♪』
睦月………
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