第27話 答え

 窓の外が明るくなってきた。こんな時間まで考える事はただ一つ。雪花への想いとその想いの告げ方だ。

 昨日、雪花に待っててくれと言ったはいいけど、あんまり待たせるわけにもいかない。俺の中では答えはもう出ているのだ。

 紗雪には悪いけど、俺は雪花を選ぶことに決めた。雪花となら一番自分を出せる気がする。

 よし、クリスマスだし今夜言おう!

 決めたら眠くなってきたな……。

 少しでも寝るか……。


「おはよ~」


 昼前くらいに起きてリビング行くと、奈々が昼食を食べてるところだった。


「おにぃはよ~。今日起きんの遅かったね。みんないないよ~」


「みんな?どこか行ったのか?」


「お母さんと雪路さんはクリスマスデートだって。今日は泊まってくるから。ご飯はよろしく~だって。クリスマスだけど、新婚だからしょうがないよね?紗雪さんは友達と遊ぶみたいで、雪花さんはわかんない。何も言わないで出ていったから」


「そうか…奈々はどっか行かないのか?」


「…奈々は今日やることあるから。」


「やること?」


「ん、だからおにぃ起きるの待ってたの」


「俺?なんかあったっけ?」


「うん、おにぃご飯食べる?まだ食べないなら奈々の部屋にきてちょうだい」


「まだ腹減ってないから先に行くかな。今すぐか?」


「うん。今食器下げるから待ってて」


 奈々が俺に用事ってなんだ?ゲームか?

 食器をさげた奈々と二人で二階に上がっていく。


「入って」


「で、用事ってなんだ?」


「……おにぃって雪花さんと付き合ってるフリしてるって言ってたけど、ホントにフリで終わったの?」


「………なんでた?」


「昨日の雪花さん見ればわかるょ」


 紗雪も言ってたけどそんなにだったのか…


「で、おにぃはどう思ってるの?」


「…ちゃんと告白しようかと思ってる」


「そっかぁ……。あのさ、あたし達兄妹じゃん?」


「ん?そりゃそうだろって…うわっ!」


 奈々が抱きついてきた。


「えーっとね、あたしさ、多分小学校の頃くらいからおにぃの事好きだったの。もちろん異性としてね。血が繋がってるからダメだってのはわかってたんだけどね。けど、けどね、昨日のおにぃと雪花さん見たらぁ、勝てないなぁ…っておも……思っちゃってぇ……グスッ……」


「奈々、お前……」


「だ…からね…スン……おにぃ…………頑張って……ね……」


 ここで普通なら抱きしめ返しちゃだめなんだろう。期待させてしまうから。けど抱きしめ返してしまった。好意ではなく、俺を好きになってくれた感謝の気持ちとして。


「ありがとう、けどごめん」


「……うん。ちゃんと雪花さんに言ってね。捨てられたら拾ってあげるから」


「なーに言ってんだ」


「じゃ、ちょっと泣くから一人にしてちょうだい」


 そう言って俺の体は押され、目の前のドアが閉まった。


 よし、俺も気合い入れないと!

 ポケットからスマホを出し、電話帳をスライド。雪花の名前をタップして電話をかける。

 ……………中々出ないな。後でかけ直そうとして一回切ろうかと思ったその時


「……もしもし」


 なんか元気ない…か?


「今どこにいる?何時頃帰ってくる?」


「……昨日の公園。帰る時間はまだ決めてない」


「ちょっとそこで待ってて。俺も今からいくから」


「えっ……」


「あーまずかったか?」


「いえ、うん。わかった。待ってる」


 電話を切る。なんか様子がおかしかったよな。何かあったか?


 胸騒ぎがして、急いで着替えて公園に向かうと昨日と同じベンチに俯いて座ってる雪花を見つけた。



「よう、起きたら奈々しかいないから再婚前に戻ったかと思ったよ」


 手のひら一つ分の隙間をあけ、隣に腰をおろす。そして少しふざけて言ってみる


「……ッ!そんなわけないじゃない。ちゃんと再婚して私達は兄妹になったわよ。…そしてこれからもずっと……」


 顔の下で両手をギュッと握りしめたまま雪花が言った。聞きづらかったけど最後なんて言ったんだ?まだ雪花は顔を上げない。けど、奈々だって勇気を出して言ってくれたんだ。俺も言うと決めた以上伝えないと!


「あー、昨日の事を俺もずっと考えてたんだ。それで雪花に言うことがあってな。」


 ビクッ!


 雪花の肩が震える。


「い、言うこと…?」


「あぁ、雪花。あのな、俺もお前が好きなんだ。いや、好きになったんだ。だから今度はちゃんと俺と付き合ってくれないか?フリじゃないホントの恋人として」


 雪花がバッと顔をあげる。その顔はひどくやつれ、目の下には隈ができ、悲しみを隠し切れない表情をしながら涙を流していた。驚いて次の言葉が出せないでいると目の前から声が聞こえた。


「ごめん…なさ…い……」


「えっ?」


「ごめんなさい。私はその、気持ちに応える事ができないの。」


「え、だって昨日…」


「昨日の事は忘れて?私も忘れるから…。これからはただのでいましょう…」


 頭が理解することを拒否している。なぜ?どうして?うぬぼれてるわけじゃないはず。確かに俺達の気持ちは一緒だと思ってたのに。


「なっ…」

 なぜ?と聞きたいのに上手く言葉がでない


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。私は…あなたとはあなたとだけは付き合えないの…。それに、私はこれから誰とも付き合うこともないわ……」


 そう言ってベンチから立ち上がると目の前からいなくなってしまった。


「どう……して……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る