第14話 紗雪side 宣戦布告

 小6のときアタシはデパートの中で迷子になった。パパと一緒にその時テレビでやっていたミラクルスイーツプリンセスのショーがあったので連れてきてもらっていたのだ。初めてくる家からちょっと遠くて大きなデパート。地元じゃ考えてしまいられないほどのたくさんの人達。

 少し目移りしただけで、パパの姿を見失ってしまった。今思えばアタシはかなりパパに依存していた。パパの姿が見えなくなった途端に動けなくなってしまった。後はもうただ泣くだけ。泣いてればきっと見つけてくれるだろうと。

 けど、最初に声をかけては来たのはパパじゃなかった。


「おい、さっきから見てたけどずっとここで泣いてたけど迷子か?大丈夫か?」


 アタシと同じくらいの男の子だった。


 それからその男の子はアタシの隣に座って色々話してくれた。

 父親がいないこと、母親と妹と一緒に女の子向けのショーに連れてこられた事、つまらなくて抜け出したこと、同じ所を通るたびに同じ所で泣いてる女の子を見つけたこと。


 そこで私も自分の事を話した。

 その女の子向けのショーを見にきた事。アタシにはママがいないこと。途中でパパとはぐれてしまったこと。初めて来た場所で怖くて動けなくなってしまったこと。男の子はアタシの話を全部しっかり聞いてくれた。


 すると男の子はアタシの手を握ってこう言ってきた


「じゃ、そのショー見にいこーぜ!それを見にきたならお前の父ちゃんもそこにいるかもなっ!」


 アタシは笑顔でそう言う彼の顔をみて思わず縦にうなずいていた。


 楽しかった。とっても楽しかった。手を繋いで会場まで走り、途中で意味もなくおもちゃコーナーで一回りしたり、試食コーナーで全種類たべたり…今までしたことないことをたくさんした。ショーを見た後パパにも会えて、怒られた後、帰ろうとしてたら彼がシフォンちゃんと綺麗なお姉さんを連れてきて一緒に写真撮ろうといってくれた。


 カシャッ


 写真に写るのは決めポーズをしたシフォンちゃん、そのとなりにシフォンの声優さん。一緒にきた弥生さんっていう綺麗なお姉さんがそうだったみたい。おかげでもっとシフォンちゃんが好きになった。

 そしてその前には手を繋いだ名前も知らない男の子と顔を赤くしたアタシ。


 これがアタシの初恋。


 妹には乙女脳とか言われるけど、アタシはまだ運命の出会いとか信じていたかった。


 だけど、まさか、新しい家族として会うとは思ってなかったなぁ~。


 パパに再婚の話をされたとき、とうとう来たか!って思った。

 そのせいで表情が強ばったけど再婚にはホントに賛成だった。最近彼氏の出来た妹はなにかを考えてるみたいだったけど、まさかあんな事を考えてるとはおもわなかった。

 妹にいきなり彼氏が出来たのはホントにびっくりした。相手もクラスで目立たない子だから余計に。けど、理由を聞いてなんとか納得。さすがにズキューンはないんじゃないかな?っておもったけど言わないでおく。彼氏の方とも登下校についていったりして話を聞いてるうちに安心できた。妹が突っ走った感があるけど、それも容認して包んでる感じ。羨ましいと同時になぜか懐かしくなった。


 そして会食の日。パパのお相手を見た瞬間アタシは自分の目を疑った。だから思わず聞いてしまった。

 シフォンちゃんですか?……と


 まさか決め台詞付きで帰ってくるとは思わなかった。


 そしてまさか妹があんなに暴走するともおもってなかった。


 お守り代わりにバックに入れていた写真をシフォンちゃん……いや、弥生さんに見せてみた。すると弥生さんもパパもニヤニヤしている。どうしたんだろ?


 アタシと橋本君が呼ばれる。弥生さんが橋本君の前髪を上げて髪型を変えていく。それを見ながら(えっ、まさか、そんな…)と思ってたところにとどめの一言。

 隣の男の子は、うちの息子よ……と。

 心臓がドクンと鳴り、こんな近くいたの?という感動と妹の彼氏だという事実で頭がぐちゃぐちゃになってその後の事はほとんど覚えてない。


 数日後、アタシ達姉妹に橋本君から話があるとメッセージが届く。

 そして偽の恋人の話。すごいビックリしたけど、それと同じくらい安心もした。橋本くんは簡単に言ってるけど、アタシにはわかる。妹はきっと本気になってる。それはアタシも同じ。

 初恋の王子様が変わらずに成長して目の前にいるのに、諦めるはずがないでしょ?


 家族になるから、誕生日を聞いたらアタシ達のほうが後だったから橋本君は……いや、悠君はお義兄ちゃんになる。

 午後からは友達と約束があるからもう時間がない。

 なので今日はとりあえず彼女立候補宣言と妹への宣戦布告!とホッペに軽くキス


 悠君も妹もビックリしてたけど知らんぷりして店をでる。


 唇には悠君の頬の少し乾燥した肌の感触……。思い出しながら微笑む。



 せっちゃん……お姉ちゃん負けないよっ!

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