第13話 雪花side3 溺れる
まさか姉さんがあんな事言うとは思ってなかった。ホントの事を知って怒るかと思ったのにそんなことはなく、むしろチャンスだと思ったみたい。
初恋で4年片思いしてきた相手が目の前に現れたのだから乙女脳の姉さんが止まるわけがない。
だけど私も止まれなかった。偽物の関係がバレてアドバンテージがなくなっても私の気持ちは本物だったから。
取られると思った。怖かった。イヤだった。
いつの間にか姉さんとの勝負になっていた。
負けられないっ!
姉さんが予定があって抜けてしばらく、彼の様子がおかしいのに気がついた。朝から少し変だったけど、これはなんかまずい気がする。ぼーっとしてる彼の額に手を置いてみると、ものすごく熱くなっていた。これは…
急いで会計を済ませて彼の手をつかんで近くのく休日診療もやってる病院に行く。インフルエンザみたい。
会計の時に看護師さんに 「優しい彼女さんね」と言われたけど、なんて返せばいいのか分からずアタフタしてたらものすごく微笑ましい目で見られてたので逃げる様に病院を出た。彼に聞くと家に誰もいないみたい。このまま一人で帰せないので支えながら家まで送って行くことにした。途中で冷えピタとスポーツドリンクを買いながら彼の家に到着。鍵が彼のバックの中にあると言うので探して玄関の鍵を開けてまたバックに戻す。
初めて入る彼の家。再来週に私達も一緒に住む事になる家。
とりあえず彼を部屋に連れていく。彼の部屋は二階の奥の部屋みたい。生まれて初めて男の子の部屋に入ったけど、こんな理由で入ることになるとは……。
とりあえず彼をコートだけ脱がせてベッドに寝かせ、起きた時に転ばないように床に散らばっていた服やラノベ達を片付ける。ホントは楽な格好に着替えた方がいいのだろうけど、そこは今の家族にお願いする。私にはまだ無理……。
ある程度片付けて彼を見ると虚ろな目でビーズクッションを抱えてワシャワシャしていた。
か、可愛い……。
そういえばと思い、来る途中で買った冷えピタを彼の額に貼る。一瞬ビクッとなるが少しずつ落ち着いてゆき、だんだん寝息に変わってゆく。立ち上がろうとすると彼の手がニットの裾を掴んでいた。ビーズクッションの生地とニットの生地が似てたから間違えたのだろうか。その手を握り胸元で抱き締める。
(早くよくなりますよーに)
その時
フニッ
「ふぁっ」
フニッフニッ
「んっっ…ふあっ」
えっ、なに?もしかしてビーズクッションと間違えてる!?
「……かたぃ」
……ブラが硬いせいよ。私の胸は固くないわよ……
そのあと逃げるために身をよじったのが失敗だった。元々小さめのを付けてきたせいでホックに簡単に外れてしまった。そうなれば当然……
「ん、やーらかいなぁ……」
フニフニフニッ
「ん~~~~~っ!んあっ!」
これはやばい、体中に電気が走ったかような感覚になる。その時、
「ただいまー!おにぃ帰ってきてるのー?」
妹の奈々ちゃんの声が聞こえたので急いでホックをつけ直し、薬の入った袋を持って廊下に出る。薬の説明等した後、逃げる様に家を出ていく。
「おじゃましました!お大事に!」
家までの帰り道を歩いて行く。まだ雪はふってないけどそれなりに気温は下がってきているし、吐く息は白くなっている。
けど、顔は熱い……
心臓もまだドキドキしている。
私の胸は同年代に比べても大きい。その事は自覚している。学校でも話かけてはこないのに胸ばかりみてくる男もいる。はっきりいって見られるだけでも気持ち悪い。
なのに彼だと違う。触られた瞬間に嬉しさともっと!って気持ちが溢れてくる。
もうすでに、彼の存在自体が私に対してだけの麻薬みたいなものになっている。
抜け出せない
溺れていく
姉さんには負けられない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます