第34話親心
騎士団のフロレンツに当てがわれた部屋に辿り着いた。
質素な作りではあるが、他の若い騎士達は相部屋なのに対し、個部屋である程度の広さはある。
命のやりとりをしなくていい自国のベットの上で久々に寛ぐ。
『フロレンツ。新しい所に行くの?』
「どうしようかな……僕が戦場に出たらルルちゃんもついてくるんでしょ?」
『当たり前だよ。ルルはフロレンツのそばから離れない。大好きだもん』
「そっか」
『戦場だろうとどこだろうとルルはフロレンツがいれば、それでいい』
ルルの真っ直ぐな瞳にフロレンツの決意は固まった。
「ルルちゃんお風呂行こっか! 城の風呂は共同なんだけど、広くてまったりできるよ!」
『うん。まったりする』
「待てよ……ルルの裸体を他の男に見せるのか……」
フロレンツはおもむろに机に座ると、呪詛を練るかのようにペンを走らせた。
「よしこれで誰も入ってこない」
フロレンツはその紙を持って風呂の支度をして、ルルを部屋から連れ出すのであった。
フロレンツ達が入る時間には張り紙がされ、久々に風呂に入ろうと思ってやってきた若手の騎士達がその張り紙に絶句する事となる。
そして、それがエルヴィンの耳へと入り、対処するため、腰を上げ風呂場に向かった。
その張り紙を見て、エルヴィンは豪快に笑い、この手は使えるなと風呂場に入っていく。
「おい、フロレンツ。戦帰りの風呂を貸し切るとは何事だ?」
エルヴィンが風呂に顔を出せば、炎竜と共に湯に浸かるフロレンツの姿があった。
「エルヴィン大佐! そっか、エルヴィン大佐にはあの脅し文句は効かないか」
「おい、フロレンツ。その竜の嬢ちゃんと風呂が終わったら、俺の部屋に来い。ちゃんと張り紙はつけたままだぞ!」
「つけたままでいいのですか?」
エルヴィンは口角を上げると、肩に顔を覗かせるルイーゼの頭を撫でる。
「俺も久々にルイーゼと楽しみたいからな!」
「でしたら、我々はそろそろ風呂から出ますので、風呂の準備をしてお待ち下さい。お迎えにあがります」
「おお、頼んだ」
意気揚々に足取り軽く、風呂場から出て行く姿をフロレンツは生暖かい目で見送った。
「僕はルルちゃんの体を見られたくないだけだったんだけどな……」
『ん?』
「いや、なんでもないよ。ルル上がろうか」
『うん。お風呂楽しかったー!』
【竜入浴中! 首が繋がった状態でいたいならば、入るべからず】
そう、書かれた貼り紙は長いこと、風呂場に掲げられていたそうな。
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