第20話レオニーとの距離
「ルルちゃーん!! 今帰ったよ! お利口さんにしてた?」
部下たちのいる野営地に戻ったフロレンツは、傷だらけになった部下たちにシーと言われて口を押さえた。
そこには天幕の中で丸まって寝ているルルの姿があった。
「やっと眠ったところなんですから……隊長静かにしてくださいね」
「君たちには迷惑をかけたようだね……ルルちゃんはお天馬だからね……」
「いえ、そんな事より隊長戻りが早いですね……レオニー副隊長は?」
騎士たちの中で「おい、バカ。そこは聞くな」と小声でやり取りされている。
フロレンツは首を傾げながら、ルルの上に布をかけてやる。
「そういえば、ロルフ少尉に口説かれてたなー」
「え、それって……」
「隊長それでいいんですか?」
「レオニー副隊長取られちゃいますよ?」
若い騎士たちがフロレンツに詰め寄り、フロレンツはまあまあと宥める。
「だって、今僕はレオニーに近づくと怒られるだろうし……。それに後は本人たちの自由でしょ? レオニーも拒みたいなら、拒むでしょう。」
そう言って、天幕から出ると、若い騎士たちの背後にはレオニーが立っていた。
息が少し上がっているので、慌ててフロレンツを追ってきたのだろう。
「ほら、何も問題ないみたいだ」
「そうですよ。皆さん何を心配してるんですか? 私はロルフ少尉とどうにかなるわけないじゃないですか……」
レオニーとフロレンツは一定の距離を保っていたが、フロレンツがよく見れば、レオニーの目元が潤んでいる。
「レオニー?」
「フロレンツ隊長ったら、何も声をかけずに酒場を出て行くんですもの……あんなに上役の方しかいない宴会に置いて行くのはあんまりです。ルルちゃんの寝顔が見れたので、私は自分の天幕に戻りますね……」
そういうと、少し早足でレオニーはその場を去った。
「君たちごめんよ。ルルの事もう少し見てて!」
「あ、はい!」
フロレンツはレオニーの去った方向——森の方へと走って向かった。
「隊長まずいの聞かれたな」
「明日の宴会は延期するか? 流石に前日にこれじゃあ……」
「いや、悲しみはみんなで共有するものだぜ」
「お前何カッコつけてるんだよ!」
部下たちはそれぞれワイワイと騒ぎながら、フロレンツの天幕前で二人の関係を案じるのであった。
*
「レオニー!」
木々が生茂り足場の悪い中、走って追いついたフロレンツがレオニーの腕を掴む。
「隊長、今はまだあまり近づかないでください」
「すまない。臭うのか?」
「いえ、そういうわけではないのですが……」
「じゃあ……」
フロレンツは掴んだ腕をそのまま引っ張り、レオニーの事を抱きしめた。
「たっ、隊長!?」
「泣いている女を一人にするほど、僕はすれてないさ……レオニー置いていった事、怒っているの?」
レオニーは首を横に振ると、フロレンツを抱きしめ返す。
「違います。あなたの眼中にないと思うと、悲しくて悲しくて……」
「悲しい? 何故?」
「あなたが好きだからですよ。フロレンツ様……」
レオニーの手が首に回され、唇を奪われる。
フロレンツはそれに応えるように、腰を抱く手に力を込めた。
*
『フロレンツー!!』
火魔法を発動させているルルが空から飛んでやってきた。
フロレンツは顔をレオニーから離すと、ルルの魔法を相殺する。
レオニーの耳元で「残念」と囁けば、レオニーから離れて、ルルに手を伸ばした。
「ルルちゃんどうしたのー? 起きちゃったー!」
『お兄さんたちがフロレンツとレオニーがどうのこうのって騒いでるんだもん』
「そうか、アイツらがルルの事を起こしたんだね……。火祭りだ!」
その言葉の通り、レオニーたちと戻ったフロレンツは若い部下たちに夜の鍛錬と称して、森までおびき寄せ、ルルのブレスの練習台として逃げ回らせるのであった。
「俺たち隊長の心配してただけなのに、あんまりだーー!!」
「でも、隊長元気になったみたいでよかったです!」
夜遅くにも関わらず、フロレンツ隊はワイワイと楽しそうな声が聞こえているのであった。
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