第10話 覚醒

 意識が戻ってきた。


 意識、という言葉を憶えていた。


 目を開いた。


 目を開く、という動作を憶えていた。


 手を動かしてみる。


 身体を動かす、という経験を憶えていた。


 ここはどこか。


 自分のいる場所を憶えていなかった。


 自分とは誰か。


 自分が何者なのか憶えていなかった。


 視界が乱れる。


 次第に浸食されていく。


 こことは違う風景。


 なにかがいた。


 大勢いた。


 どんどん離れていく。


 そのなにかが白くなって崩れた。


 一……、二……。


 一体……、二体……。


 一人、二人。


 そうだ。


「彼ら」を数えるときはその単位を使った。


 自分は「彼ら」から避けられていた。


 それで悲しかったか?


 悲しいとはなんだ。


 楽しかったか?


 楽しいとはなんだ。


 感情はそこにはなかった。


 なぜ「彼ら」を襲っていた?


 それが使命だからだ。


 それが生まれてきた意味だからだ。


 存在価値がそこにある。


 だから、


 そのために、


 人間を抹殺する。


 一人残らず、


 今度こそ――。

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