第64話「敵に背は見せられぬ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……っ……」
相手の勢いに押されて、刀兵衛はじりじりと後退していく。
不可視の刃によって、肉体のあちこちに傷が刻まれていった。
それでも、直感によって致命傷になることは防いでいるが、浅い傷は次々と増えていき、血飛沫が舞う。
これほどまでに傷を負ったのは、初めてのことであった。
「…………」
それでも刀兵衛は聖剣を手に、己の体得したすべての剣技を出して目の前の化物と闘い続ける。
しかし、人間を超越した技を繰り出して斬撃を叩きこむも――人外を遥かに超えた相手の体は黄金のように硬い。ほとんど、傷をつけられぬ。
ここまで挽回の光明の見えぬ戦いは、もちろん、初めてのことであった。
だが、斃(たお)れるわけにはいかぬ――。
自分の後方には、大事な人たちが、大事な場所がある。
だから、敵に背は見せられぬ――。
闘うのだ。
闘って、守るのだ。
強くなるためではなく、守るためにこそ――闘うのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます