第63話「修羅」

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 


(見える、見える、見える、見えるぞおおお!)


 ドゥダーグは歓喜に打ち震えながら、十指の刃を振り回す。


 先ほどまでは忌々しい異世界人の動きについていくのがやっとだったが、今は手に取るようにわかる。


 人間であることをやめたおかげで、視覚も筋力も反射神経もなにもかもが人外の領域に達しているのだ。先ほどまではかすりもしなかった刃が、相手の肉体を少しずつ傷つけ始めていた。


 目の前の忌々しいほどの強さを誇っていた異世界人も、人外の膂力と速度で振るわれる十の刃を捌ききることはできないようだ。


(ぐははははぁ! わしは強い! わしこそが英雄! わしがこの世で最強なのだあぁ!)


「ぐほぉおおおおおおおおおお!」


 天地を鳴動させる歓喜の咆哮を上げながら、ドゥダーグは刃を振るい続けた。


 もう強さ以外、いらない。

 絶対的な強者である自分さえいればいい。


 はからずも、刀兵衛が捨てた修羅の道にドゥダーグは踏みこんでいた。

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