第51話「破壊の魔女」

◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「へえぇ? これだけ魔法をぶちこんでも護りきるとは、驚いたねぇ?」


 魔法部隊を指揮し、自らも攻城魔法を容赦なく撃ちこんでいたレグナは、さして驚いた風もなくバリアで護られたルリアル城を見た。


 防御魔法は、事前にしっかりと魔法陣を敷いて用意すれば並の魔法使いでもかなり堅牢なバリアを張ることができる。


 しかし、ガルグ軍選りすぐりの十人の魔法士の攻城魔法を耐え続けるなんて尋常ではない。


「よほどの使い手なのか、あるいはなにかチートな装備でもしているのか……でも、運が悪かったねぇ?」


 レグナは蛇のように目をスッと細めると、口元を凶悪に歪ませて舌舐めずりする。

 これだけ余裕があるのは、レグナには奥の手があるからだ。


「疲れるから大魔法は使いたくなかったんだけどねぇ……くふっ、これだけ頑張られると粉々に打ち砕いてやりたくなるんだよねぇえっ!」


 ドゥダーグの信頼を得て魔法部隊を率いてきただけあって、レグナも凶悪で邪悪で極悪な性格の持ち主だった。


 強き者が弱き者を蹂躙(じゅうりん)する。

 その理(ことわり)を実践することに、暗い悦びを感じる性格なのだ。


「雑魚が頑張ったって強い者には勝てないんだよねぇえっ!? この世は弱肉強食だってこと、骨の髄までわからせてやるよぉおおおおお!」


 レグナは獲物を捕食する蛇の如く瞳孔を開き――牙を剥き出しにして吠える。


 この世界で亜人に分類される上に容姿も醜いレグナは、忌み嫌われる存在だった。


 だが、誰よりも魔法の才があった。

 そんな自分をドゥダーグは魔法士として拾い上げただけでなく、女としても非常に可愛がってくれたのだ。


 だから、美人と評判で高貴な血の流れるリリア姫など憎悪の対象でしかない。


「殺す殺す殺す殺す! あたしが世界で一番の魔法使いだぁあああああああああ!」


 暗い情念をこれ以上ないぐらい増幅させ、その両掌(りょうたなごころ)に集め――レグナは世界最大級の攻城魔法をルリアル城へ――リリア姫に向けて、ぶちこんだ。


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