第50話「林の中の静かな闘志」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 敵が攻城戦を開始するとともに刀兵衛率いる遊撃隊は山を下り、林の中に着陣した。


 なお、軍馬たちは兵の後ろを粛々とついていった。ただ、妙に刀兵衛に懐いてる白馬だけは刀兵衛の半歩後ろをつき従うように移動していたが。


 そして、いよいよ魔法戦が始まったところで、刀兵衛は白馬に乗って下知する。


「……これより、騎馬隊及び抜刀隊は敵の攻城軍の側面へ突撃いたす……」


 刀兵衛の言葉に、鍛錬に鍛錬を重ねてきた兵士たちの表情が引き締まった。


 状況によっては本陣を突くことも考えていたが、敵もさるもの。

 本陣に千の兵を置くだけでなく、攻防どちらにも投入できるように三千の兵を川の前に油断なく配置している。こうなると短期決戦というわけにはいかない。


 だが、逆に狙いは明確となる。


 まずは、敵の攻城軍四千、今は消耗して三千七百ほどだろうが――を壊滅させることに注力すればいい。


 そもそも、守備側はほとんどが非正規兵。園たちが頑張っても、いずれ限界が来る。


 戦場を渡り歩いていた頃の刀兵衛は味方に構わず、ひたすら強き者を求めて闘っていたが、今は違う。


 ただ強くなるだけの修行は終わった。

 今度は、大事な者たちを守るためにこそ闘うのだ――。


「……この戦、必ず勝って、城を、みんなを守り抜くでござる……」


 刀兵衛の重々しく響く言葉に、鬨の声を上げる代わりに騎馬隊士と抜刀隊士も力強く頷き、静かに闘志を漲らせていった。


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