第45話「園姫の奮闘」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「猟師を除く弓矢隊は弓を捨てて槍を持て! 絶対に敵兵を上げてはならぬのじゃ!」


 園の指示のもと、慌てて守備兵は装備を交換する。

 この槍も、殺傷力を強化したミスリル製のものだ。


「ガルグ軍の力見せてやれ! かかれぇ!」


 敵の指揮官の大音声とともに、敵の攻城軍が押し寄せてくる。

 槍で応戦するも、やはり敵の数は圧倒的だ。


 梯子をかけようとする者、城壁をよじ登ろうとする者、三人の兵士が協力してひとりの兵士を城壁の上に持ち上げようとしてくる者など、相手側は数で優勢であることを生かして、あらゆる手で攻め寄せてくる。


「そこじゃ! そこじゃっ! そこじゃあ!」


 園は城門上から瞬時に味方の破られそうな場所を判断し、槍を手に駆けつけて敵兵の侵入を防ぐ。

 その槍捌きと軽やかな身のこなしは、まるで吹き荒れる嵐のようであった。


 攻城側の勢いに及び腰になっていた守備兵たちも、園の獅子奮迅の奮闘ぶりに落ち着きを取り戻していく。

 高さというアドバンテージがあるので、ただ槍を下に向かって突き出せばいい。


 なんと言っても登ってくるときに、相手は完全に無防備なのだ。これなら高度な戦闘技術は必要ないので、非正規兵でも対応できる。


 数で押し切ってどうにか登っても、園が城壁の上を移動しているとは思えないほど瞬時に駆けつけて槍で仕留める。


 次々と攻城側の兵士が討たれていくことで、城壁が血の色に染まっていった――。

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