第39話「姉妹の覚悟」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「き、きましたっ! ガルグの軍勢、おそらく八千ほど! ぜ、全軍、来たようですっ! どうやらすぐに攻め入ることはせず、陣地を構築するようですっ!」
展望台から状況を観察していたリアリは、声を震わせて叫ぶ。
事前に刀兵衛から「……二千の兵がほぼ壊滅したことから……今度の敵はおそらく残りの兵力をすべて投入してくると存じまする……」との予測を聞いていたが、いざ八千の軍勢を目にすると恐怖で思考が停止しそうになった。
なんと言っても、こちらの正規軍は五百でしかないのだ。
領民に急遽訓練を施して守備につかせて数を増やしているとはいっても、いざ戦いとなるとどうなるかわからない。
「大丈夫です、きっと刀兵衛さまなら、なんとかしてくれます」
同じく展望台に陣取っているリリアは、八千もの軍勢を強い意思をもって眺める。
すでに覚悟が決まっているのか、頼もしいほどに落ち着き払っていた。
なお、すでにこの展望台の床には大規模な魔法陣が敷かれており、防御魔法はいつでも発動できるようになっている。
相手方は魔法士が二桁を超える数がいると思われるが、こちらはリリアとリアリのみ。そして、攻防に関する魔法を行使できるのはリリアだけだ。
つまり、魔法戦に関してはリリアにすべてがかかっていると言ってもよい。
「……絶対にこの城は守りきってみせます! わたくしと、リアリと、園さまと、家臣たちと、そして、領民たちで!」
すでに刀兵衛たちは半日前に城を出て、遊撃隊となっている。
自分たちで城を守るしかないのだ。
「はい、姉さまっ! わたしも、死力を尽くします!」
姉の強い覚悟に、リアリも落ち着きを取り戻して力強く頷いた。
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