第16話「ダンジョン最下層」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「ふむ、至って順調じゃのう」


 あれから園と刀兵衛はダンジョンを順調に攻略していった。


 骸骨騎士のほかに巨大な蝙蝠(こうもり)や凶暴な大型土竜(もぐら)、二足歩行する蜥蜴(トカゲ)のような魔物が現れたが――いずれも刀兵衛の剣技で瞬殺されるか、園の槍で滅茶苦茶に突かれて霧消した。


 ふたりの連携も戦いを経るごとに洗練されていき、まったく隙がなくなっている。

 開けた宝箱も五十を数え、金銀だけでなく剣や鎧、書物、謎の液体の入った瓶などを入手した。


 途中からはダンジョンも複雑になり、多少迷うこともあったが、敵の襲撃が脅威にならないので焦ることもない。


 刀兵衛に言わせれば、「全方位から襲いかかってくる戦場のほうが、よほど面倒でござりまするな……場合によっては、寝返った味方からも攻撃されますゆえ……」とのことだ。


 ダンジョンは、基本的に前後からしか敵が襲いかかってこない。

 壁や天井があるおかげで、前後にだけ注意を払っていればよい。


 戦場のように兵士が数百、数千規模でかかってこないだけ楽なのだ。

 倒れて死んでいるかと思えば、急に襲いかかってくる兵士もいるのだから。


 そんな戦場四方山話(よもやまばなし)をしながら階段を降りていき――伝承では最深部らしい地下十三階へ辿り着いた。

 そこは――これまでの青白い壁や天井ではなく、黄金色に輝いている。


「むう、なんじゃ、この輝きは……まさか、すべて金でできておるのか?」

「……どうやら、そのようでござりまするな……」


 これまで回収した金塊と同じ輝きを放っている。

 偽物というわけでなく、おそらくは本物の金であろう。


「おおおっ! これは壁や天井も剥がして持っていってしまいたいぐらいじゃのう! これだけの金があれば、もはや財政再建とか内政改革とか馬鹿らしくなるほどじゃ!」


 それまでの階層と変わらずに淡々と探索を開始する刀兵衛のあとを、園がはしゃぎながら続いていく。


 これまでの階層と違って構造が複雑であり、出現する魔物もより前の階層よりも強かったが(銀色に輝く凶悪な骸骨騎士などが出てきたのだが、結局は刀兵衛の敵ではなかった)――やがて、金と緋で摩訶不思議な幾何学模様があしらわれた豪奢(ごうしゃ)な扉の前に至った。


「…………」


 刀兵衛は扉の前で静止し、室内の気配を探る。

 そして、殺気が放たれていないことを確認してから、扉を押し開いていった。

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