第2話「死」
◇ ◇ ◇ ◇
気がつけば、もう刀兵衛の前に立ちはだかるものはいなかった。
敵の部隊を率いていた将は、乗っていた馬とともに無惨な屍を晒している。
つまり、相手の後方部隊を刀兵衛はたったひとりで壊滅させたのだ。
園姫はひたすら前へ進めといった。もう城へは戻ってはならぬ。振り返らず進み、また新たな領主のもとで武勇を振るえ、と。
だが、もう刀兵衛は新たな領主に仕える気には、どうしてもなれなかった。
血刀を下げたまま前へ進み続け――やがて、たどり着いたのは寒風吹き荒ぶ崖であった。
その間、敵の追っ手や落武者狩り、果ては山賊なども襲いかかってきたが、すべてを無造作に斬り捨て、ついに海にまで至ったのだ。
(もう、よい)
やはり命令に背いてでも園姫を守り、落ち延びるべきであった。
だが、もうすべては終わったこと――。
(もう、よいのだ)
生きるために生きるぐらいなら、このまま前へ進み海中へ没したほうがよい。
これ以上生きていても、戦国の世の醜さを見続けるだけだ。
だから、刀兵衛は死んだ――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます