第9話恋人、日常

さなえちゃんと恋人になり、お互いの家族から認められて、今までとは、何か違う日々を過ごしている。



 さなえちゃんは、毎週日曜日以外にも店に来てくれるようになった。


 彼女となったこともあり、距離を縮めるという感じでさなえちゃん呼びにした。


 さなえちゃんに、敬語じゃなくタメ口で話して欲しいとお願いして変えてもらった。俺もタメ口にすると約束の元で。


 俺は、このことを心友の隼咲に伝えたいと思った。時々、店に来てくれてさなえちゃんと同じように学校での日常や俺達の思い出話をする。


 隼咲は、俺の変化に気づいているらしく、俺がいうまで聞かないでいてくれた。 


「遼に彼女?昔は、告白してきたやつを容赦なくふってたやつが・・・。好い人を見付けたな。そして、俺より先に彼女をつくりやがって!今度紹介しろよ!」



 そして、店でさなえちゃんを隼咲に紹介すると、


「「えっ」」


 お互い、驚いていた。


「まさか、遼の彼女がさなだったとはな。世間って狭いものだな」


「えーと、これは、どう状況?」



「遼さん、この人は私の兄だよ」


「さな、この人はないだろ?いつも、隼兄っていっているだろ?そういえば、おれが部活で合宿していた間、お前の男が来るって言ってたな。なるほど、理解した。さな、本当に良いのか遼がお前の男で?」


「良いも悪いも関係無い。私は、遼さんが好きなの」


「よし、俺も二人のこと見守ってやる」


 隼咲によると、俺が好きな人をつくりたくないことの理由を知っているから妹のことを話さなかった。


 ふたりの両親は、なんとなく隼咲と俺のことを気づいているらしい。


 隼咲がうるさくなると予想して、すべてが決まってから伝えるつもりだったらしい。


 親友から兄弟になる。しかも、俺は、隼咲の弟で隼咲は兄という関係になってしまうからだ。


「隼咲、ありがとう。さなえちゃんを絶対幸せにするから。よろしく」


「おぅ。これからも俺達の関係は変わらないからな」


 こうして、隼咲とより絆を深めた。




 今日も、店には、さなえちゃんが来ている。あと部外者が一名。


「隼咲君よ。なぜ来ている?俺は、さなえちゃんだけと話したいんだが?」


「ここは、店だろ?俺は、お客様だ。ココアのおかわり」


「失礼しました(怒)ココアのおかわりですね(怒)」


「怖い、店員だな。ココア飲んだら、帰るからな。さなも」


「えっ、何で?隼兄と帰らないとダメなの?」


「それは、母さんから買い物を頼まれたけど。荷物が多いと予想している」


「つまり、荷物を持つのを手伝えってこと?分かった。じゃあ、ゆっくり飲んでね」


「俺も手伝おうか?今日、客が少ないから店の方は大丈夫」


「遼さん、いいの?」


「大丈夫だよ。少しは、運動しないと身体に悪いから」


「よし、さなだけじゃ頼りなかったから、遼が来ると聞いて安心したわ。行くぞ」


 そのあと、スーパーで買い物をした帰り道。


「それにしても、すごい量だな。何作るんだそして、なにする気だ?」


「これは、ふたりだけじゃ、大変だったと思う。それにしても、俺の荷物は二人より軽い気がするけどいいの?」


「大丈夫だよ。遼さん、そのぶん隼兄持たせたからいいの。運動部だから鍛えないといけないから」


「遼、無理するなよ。重かったら言えよ?さなに持たすからな」


「分かった。そのときは隼咲に持たすから大丈夫」


「はぁ?さすがの俺でも、限度があるからな」


 三人で笑って、夕暮れの道を歩いた。とても楽しかった。


 さなえちゃん達の家に着いた。


「隼咲、さなえ、お帰りなさい。遼君も帰ってきてくれたの!お帰りなさい」


「た、ただいま」


 俺は、さなえちゃん達のお母さんに『お帰りなさい』と言われると思わなかった。てっきり、『いらっしゃい』と言われると思った。


「三人とも手洗いうがいをして来なさい」


 はーいと、言う二人にあわせて洗面所に行った。


「遼、ご飯食べるだろ?」


「えっ、いいの?」


「いいよ。私も料理作るから食べて欲しいな」


「さなえちゃんが料理作るんだ。食べたいな」


「よし決まりだな」


 それから、さなえちゃんはお母さんと料理を作りにいき、残った俺と隼咲は、隼咲の部屋で話したり、ゲームしたりして時間を過ごした。


 俺は、気になっていたことを隼咲に聞いてみることにした。


「なぁ、隼咲」


「なんだよ?」


「俺、気になってたことがあるんだけど聞いていい?」


「いいぞ。言ってみろ」


「何で、お前の家族は俺に対して普通なんだ?」


「普通?もっと、分かりやすく教えろ」


「俺に対して、この家でいるのが当たり前っていうか・・・」


「なんとなく、言いたいことが分かった。つまり、お前が言いたいのは、俺達家族の一員のように扱ってるのは何でかってことだろ?」


「そう、それ!何でなんだよ」


「それはな。お前がさなの恋人であり、結婚相手でもあり、お前に家族の温もりを知って欲しいからだ。遼の親代わりでもある、じいちゃんとばあちゃんからの願いで、じいちゃん達は、自分達が親代わりとしてお前を育ててもお父さん、お母さんがいる家族の温もりを伝えることができないから、俺達家族に温もりを遼に教えて欲しいって頼まれたんだ。それがなくても俺達は、お前を家族として認めてるからな」


 俺は、それを聞いて泣いてしまった。じいちゃん達の思いや隼咲達家族の一員として認められたことへの嬉しさや喜びで泣いた。


「男がなぐ・・・な」


 そう言いながらも、隼咲は俺につられてか泣いた。男二人で泣いたのは、はたから見れば、キモいと思う。


 泣き止んだときにご飯ができたと言われたのでリビングに戻った。


 どれも美味しそうな料理が並んでいた。


「遼は、俺の隣な」


「そこは、私の隣でしょ!」


「え~と、どうしようか?」


「ただいま。晩御飯に間に合ったかな。仕事が長引いて、なかなか帰してくれないんだよ」


「お父さん、お帰りなさい」


「ただいま、母さん。遼君も帰ってきてたんだね。そして、これは、どんな状況?」


 お母さんの説明が終わると、お父さんは、ため息をしながら俺に、少し哀れむように言った。


「遼君、人気ものだな」


「そうなんですかね」


「こうなったら、じゃんけんにするぞ!」


「いいよ。するよ」


 勝負の結果は、勝者は、さなえちゃんだった。喜ぶ、さなえちゃんに、ガクッと肩を落とす隼咲。


ご飯をごちそうになると、泊まっていけばと言われて泊まることになった。じいちゃんに連絡すると、


「そんなことだと思ったよ。失礼の無いようにするんだよ。明日、帰っておいで」


「うん。分かったよ。じゃあ、明日帰るね」


 さなえちゃん家に泊まって朝は、さなえちゃんと隼咲の家族でご飯を食べて、さなえちゃんと隼咲と家を出た。二人は、学校で、俺は家に帰る。


 こんな日々が日常になるとは思わなかった。

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