Step7 希望施設を決めて入園申請をしましょう

 本日快晴

 その②

 夏の気配が近付きつつある今日この頃、梅雨の合間の快晴を見せた土曜日に、ヒロミとカズさっはりぃちゃんと共に目星を付けた認定こども園の見学に行っていた。

 ちなみに、認定こども園の教育時間を利用している子は、基本的に月~金曜日まで利用する。保育時間を利用している子は、月~土曜日まで利用することができる。そこは、保育園と同じだ。

 一件目、二件目と、ヒロミが目星を付けた制服が可愛い施設を中心に見学を申し込んでいた。


一件目

・認定こども園マリーナ星の砂幼稚園:制服が可愛くて全国的に有名


「ここの幼稚園の制服、本当に可愛い~! 青チェックと黒ブレザーで、夏服はセーラーカラーだよ~♡ ボックススカートがまた、良いバランスで……」

「でも……ヒロミさん、言っちゃあアレだけど、制服代が高っ……!」

「っ!」


 一番可愛い制服の施設は、制服は文句なしに可愛くて施設の状態や保育内容も良い。だが、可愛い制服がとっても高い!

 しかも、通園の制服だけでこのお値段。他に、体操服に通園鞄に、園で着るスモックを始めとした全身一式も追加されるので、やっぱりすげぇ高い。制服着用は年少さんになる3歳児からであるが、入園したらもれなくこれらの出費が待ち構えている。


「りぃちゃんも大きくなるし、一回は大きいサイズを買い替えることになるよね……?」

「3年で、この出費が二回……可愛いけど、可愛いけど!!」


 可愛いものには金がかかるのである。

 3歳児から利用料の無償化が始まるが、それで相殺されてしまうほどの出費……!

 しかも、この施設は行事も充実している。イコール、行事日もかかるし、保護者参加も多い。

 そんなに有給、ヒロミもカズさんも取れない。

 次!

二件目

・小紅こども園:子育てサークルで出会ったママさんから教えてもらった施設、やっぱり制服が可愛い


「ここの制服は大人っぽいんだ~! 茶色のブレザーが、中高校の制服と変わらないデザインで園章のワッペンも付いているんだよ!」

「本当だ、大人っぽいね~」

「うん、制服が可愛いのに……可愛いのに、送迎バスの本数が少ない!」

「駐車場も狭い。送迎はちょっと困難!」


 次!!

三件目

・認定こども園希望が丘幼稚園:今年から認定こども園に移行したばかり。制服がオシャレ


「シンプルなネイビーブルーの制服だけど、スッキリしたシルエットとデザインがシンプルイズベストね。お値段も……うん、お手頃」

「あれ、日中は体操着で過ごすんですね」

「はい、制服は基本的に行事と通園の時だけですね。園では体操着に着替えて、その中で自分でお着換えの仕方やお洋服の畳み方を覚えるんです」


 見学案内をしてくれた初老の女性園長先生は、品の良いおばあちゃんのような優しい雰囲気の人だった。カズさんがこっそりと、亡くなったお祖母ちゃんに似ていると言っていた。

 確かに、優しそうだけども躾や指導が厳しそうだ。実際、制服を畳まないで放置していた園児には、手を貸さずに「やってみよう」と促して、裏返った制服を元に戻させていた。

 りぃちゃんが通うことになる1歳児クラスのお部屋も、日当たりがよく暖かい色の内装で感じが良い。給食も園で手作り、毎週の献立が廊下に料理のイラストが描かれたカードで掲示されている。


「あれ、ロッカーにお習字セットが」

「うちの園では、年長さんになるとみんなお習字をするんですよ。理事長先生が個人でお習字教室をやっていまして、月に一回教えに来てくれるんです。だからほら、小学校のお習字のコンクールで入賞する子も」

「習字か。習字良いよ」

「カズさん、習字やっていたの?」

「いや、字が上手な人ってそれだけでポイント高いなって。僕がヒロミさんを良いな、と思ったのは、字が上手だと思ったからだし」

「そうだったの!?」

「うん」


 小学校の頃、同級生と交換していたプロフィールカードを上手に書こうとして、人知れず字を綺麗に書く練習をしていた努力が婚活で実るとは。

 うん、良い感じ。ヒロミもカズさんも、この幼稚園が気に入った。そしてなにより、りぃちゃんが気に入ったのだ。


「あ、あーう」

「どうしたの? りぃちゃん」

「あい」


 カズさんに抱っこされていたりぃちゃんが嬉しそうに指差したのは、幼稚園の駐車場に停めてあった通園バスだ。

 この幼稚園は、認定こども園に移行する前から送迎バスが可愛いと評判だった。三つのバスで子供たちを送迎する様子は、市内に住んでいるなら一度は見たことがある。

 それぞれ動物を模していて、フォルムも丸くパステルで可愛い。

 りぃちゃんが反応したのはペンギン号だ。可愛いペンギンさんのバスは、柴田家の周囲を走行しているを見たことがある。りぃちゃんはそれを覚えていたのだろう、ペンギン号を発見したりぃちゃんは嬉しそうにケラケラと笑ったのだ。


「りぃちゃん、ペンギンバスが好きだったんだ。この園に入園したら、毎日あのバスで通うことになるね」

「ここなら、自転車でも通える距離だね……カズさん、決めた」

「うん、ここがいいんじゃないかな」

「この施設にする」


 来年度の4月から、この認定こども園にりぃちゃんと通う。


「それでは、柴田シバタ凜歌リンカさん。来年度4月1日からの入所申請を、第一希望・認定こども園希望が丘幼稚園で承りました」


 11月

 1歳2か月になったりぃちゃんと育児休業を延長したヒロミは、ヤナギへ入園申請の書類を預けたのだった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る