Step6 情報収集をしましょう
来年本番
ヒロミは、りぃちゃんの来月7月からの保育園入所を第一希望・優りの木保育園で申請した。第二希望で清華保育園、その他第三希望以下も自宅周辺の施設を希望した。これでしばらくは待機になる、軒並み定員がオーバーしている施設ばかりだ。
「来年度になりますと、お子さんは1歳児になりますので入園できる施設の幅が広くなります」
「パンフレットの中の施設には、1歳児から受け入れ可能ってありますよね。公立も、意外と0歳を受け入れてくれないし。もう、いっそのこと家から遠い園でもいいかなって。りぃちゃんがもう少し大きくなれば、私がバスや自転車で送り迎えできるし」
「それなら、認定こども園はどうでしょうか?」
「どんな施設ですか、それ?」
「認定こども園とは、幼児の教育と保育を一体的に行う施設です。簡単に言えば、幼稚園と保育園を一緒にやっている施設です。受け入れの年齢は上がりますが、1歳以上でバス通園を希望するならばニーズに合っていると思います」
認定こども園、最近になって新設された保育施設である。
ヤナギが説明した通り、簡単に言えば幼稚園と保育園を同時に行っている施設だ。同じクラスの児童の中には、夕方までの保育の必要がなく、小学校教育に係るお昼すぎで帰宅する児童。両親共働き等の理由で保育を必要とし、夕方までの預かりを必要としている児童と、帰宅時間が異なる児童が合同で過ごすことになる。
画一的な幼児教育の場として、また、保育のニーズを補うために近年では幼稚園・保育園から認定こども園へと移行する施設も増えてきている。
近年は、保育園の需要が増えて、逆に幼稚園は需要が減り児童不足になる施設もある。共働きの家庭は保育園、母が専業主婦ならば幼稚園、というのが一昔前の風潮であるが、その理論で行けば共働きは増えた現代では幼稚園のニーズが減ってしまう。
そのため、幼稚園と保育園を一緒にやることで、保育園も幼稚園も入園する児童を確保できるということなのだ。
「認定こども園には、幼稚園をメインにした『幼稚園型』と、保育園をメインにした『保育園型』。二つの長所を兼ね合わせた『幼保連携型』と種類があります。『幼稚園型』になれば制服や通園バスが充実していますが、保護者が参加する行事や教育に使用する教材費の出費が増える場合もあります」
「むしろ、制服や通園バスがあった方が良いんです。私が幼稚園に通っていましたから、保育園よりも勝手が知っているかなって」
「なら、幼稚園型認定こども園を中心に考えてみたらどうでしょう。殆どの施設が1歳児からの受け入れですが、最近に認定こども園に移行したばかりで入園児が少ない施設もあります」
つまり、1歳児という条件をクリアしていれば、認定こども園は以外と穴場なのだ。
名称は『幼稚園』のままであるが、実際は保育園の時間帯も子供を預かってもらえる。移行の情報は公開されているが、認定こども園の情報は情報を得ないと分らない。
「ちなみに、どのこども園?がオススメですか、制服一覧とかありますか?」
「市内に認定こども園は二十数か所ありますが、全部を全部市役所で把握している訳ではありません。パンフレットならあっちにあります、見学は直接申し込んでください」
「あ、はい」
「……それと、市役所に入って来る評判と、実際の保護者の方々からの評判は違うものがあります。餅は餅屋、子育て世代の情報は子育て世代から」
と言うと、ヤナギは一枚のチラシをヒロミに手渡した。この子育て支援センターの一階でやっている、子育てサークルの案内であった。
そもそも、『子育て支援センター』とは、地域の子育て支援拠点として、子育て世代の交流促進に子育ての相談・情報の提供の場なのである。
保育園の相談のためだけに訪れていたので、一階にある『すくすくっこクラブ』はことごとくスルーしていたヒロミであった。
「こんにちは! 子育てサークル『すくすくっこクラブ』の利用は初めてですか?」
「はい。お願いします」
「畏まりました。子育てサークルは、子育て世代のパパ・ママたちの交流や、所属している保育士さんに子育ての相談ができる場になっております。サークルのお部屋で自由にお子さんを遊ばせたり、悩みを相談したり、親子で楽しく過ごしてくださいね~」
『すくすくっこクラブ』を訪れていたのは、ヒロミと同じ子育て世代のママたちと、ママたちに連れられて遊びに来ている色々な年代の子供たち。中には、りぃちゃんの6か月検診で知り合った、同じ産婦人科に通っていたママさんもいたのだ。
「柴田さん! 柴田さんもここ使っているの?」
「今日、初めてなんです」
「そうなんだ~!」
餅は餅屋、子育て世代の情報は子育て世代から。
「幼稚園? なら、駒っ子幼稚園が良いわよ! うちの長男が通っているんだけど、園長先生の人柄が良いのよ~」
「柴田さんの家からなら、すみれ野幼稚園の方が近くない。学区が同じ子たちも多いから、同じ小学校の子が多いわよ」
「はまゆう幼稚園はブログの更新がまめだから、日常生活の様子がよく分るわよ」
「青の星幼稚園はやめておいた方が良いわよ。あそこの園長先生、贔屓が酷いってもっぱらの噂よ~」
「えー……友達の子、そこの幼稚園に願書出すって言っていたわ」
出るわ出るわ、欲しい情報に特にいらない情報。中には、まだ認定こども園に移行していない、ただの幼稚園の情報もある。
流石、ママたちの情報網は広範囲に張り巡らされているのである。
「小紅こども園は、制服が可愛いわよね。最近、小さい子たちの預かりも始めたんだっけ?」
「その話、詳しく教えて!」
可愛い制服。
まずは、ヒロミが重要視しているそのワードの収集から始めることにする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます