四話 憑りつかれ

 悪霊は普通、目に見えないが相当な恨みや憎しみがあると見えることがある。

 ほとんどは悪霊単体だが、たまに人に憑りつくことがある。


 大概その人が気絶すれば悪霊は出て行くが、出て行かない場合がある。


 そういう場合、真明のような僧侶が悪霊をはらい追い出す。

 その悪霊をはらうために真明は修行の旅に出ている。


 食事を済ませた真明が村に戻ると、人だかりができていた。誰かが喧嘩しているみたいだった。


 真明は人混みをかき分け前に出ると、片方の男がもう片方の男を殴っていた。


 殴っている方の男は我を忘れてしまっているらしい。

 錫杖をつきながら、殴っている方の男に近づいて行った。真明はその男が悪霊に憑りつかれていることを見抜いていた。


 その男に近づくと、真明がはらう力を持っていることを感じたのか殴るのをやめ、急に逃げ始めた。


 悪霊に憑りつかれた男、以下悪霊男と呼ぶ。

 悪霊男は村の外に向かって逃げているようだ。


 悪霊単体もそれなりに力はあるのだが、人に憑りついた悪霊は人の潜在能力を引き出し、より強い力を得る。

 それ故悪霊は、はらわれるのを嫌う。


 悪霊男はものすごい速さで走っているが、真明も負けてはいない。

 寺が山の上にあるため普段から道なき道を走り抜けていた。だから、歩きにくい道でも平気である。


 真明は走っている道からそれて、先回りすることにした。

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