五話 憑聖退光(ひょうせいたいこう)
森を抜けて地面のある平地にさしかかった時、悪霊男の前に真明が立ちふさがった。
そして、錫杖をその場でついた。
悪霊をはらうには悪霊の周りを錫杖で四角形になるようにつき、結界を張る。そのあと短い呪文のような言葉を唱えることではらうことができる。
あと三か所つけばはらえるが、そう簡単にはいかない。
悪霊男は真明が最初に錫杖をついた跡を足で消してしまった。
このはらい方は止まっている者には有効だが、動いている者には不利なところがある。不利だが一番強力なはらい方である。
そして、真明ぐらいしかやっていない方法でもある。
悪霊男はずっと真明に攻撃しかけているが、全てかわしている。
一度攻撃がやんだあと、真明は近い距離に二か所錫杖をついた。
すると、半透明の結界の壁が一つできた。この結界の壁に悪霊は近づくことができない。
四角形の結界を作ると言ったが、きれいな四角である必要はない。
どんな形でもいいから、四か所ついてしまえれば結界の外には出られない。
真明は考えながら動いている。悪霊男の行く先をふさぐように三か所目をついた。
追い詰められた悪霊男が大回りして結界の外に出ようとした。
しかし、それを読んでいた真明は最後の四か所目をついた。
悪霊男は完全に結界の中に閉じ込められてしまった。
外に出ようと抵抗するが弾き返されてしまった。
「なあ僧侶さん。もう悪いことはしないから、外に出してくれないか?」
真明は無言のままだ。
「頼むよ。あんた強いんだろ?手下になって働くからさぁ、お願いだよ!」
真明が錫杖でついた所を消そうとすると、悪霊男はニヤリと笑った。
だが、真明は消さなかった。「憑聖退光!」と真明が言うと結界が白い光に包まれた。
「ちくしょう!もう少しだったのに!呪ってや――」
悪霊男に憑りついていた悪霊が白い光と共に消え去った。
悪霊が出ていった悪霊男はその場に倒れた。
真明がその男に近づく。
「大丈夫、ですか?」
「あ…ああ。なんとか。でも身体中に力が入らないな…」
男は自力で立ち上がろうとするが、すぐに倒れてしまう。
真明はその男を支えながら立ち上がらせた。
「ありがとうな。おれは耕蔵(こうぞう)だ。あんたは…」
「真明です。このまま村へ戻りましょう」
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