第3話 彼らの体の組成について
第2話で彼らの体重を35000tとしたが、そもそもこの数値は正しいのか。確かに公式の値であることは言うまでもない。が、ここでは公式の値も疑ってかかってみたいと思う。
この値が正しいとするなら、彼らは何かしらの物質で出来ていることになる。そうすると、いわゆる"人"の体重≒70kgを差し引いた34999930kgを何処からかかき集めなくてはならないことになる、しかも変身シーンの短時間に。
34999930kg__人に換算すれば499999人、乗用車35000台分、学校によくある25mプール65杯分。
これがあのちっこい変身アイテムの中に全て入っていて、簡単のために変身アイテムの体積が2.5cm×2.5cm×16cm=100cm³=(1/10⁴)m³と仮定してみよう。この時変身アイテム内の密度は、およそ
3.5×10⁷kg÷100cm³=3.5×10⁸g/cm³
となり、中性子星や原子核ほどではないが白色矮星よりも高密度である。
それだけの質量かつ高密度なものを身に付けるときには考えなければならないことがある。体との間に生じる重力加速度だ。変身アイテムをポケットに入れており肌から変身アイテムの重心までの距離をだいたい1cmとすると、万有引力の公式から
6.67×10^(−11)×35000000÷((0.01)²)=23.345 m/s²
と、地球の重力の2倍以上の重力が胸にかかる。然し一方で頭辺りにかかる重力は胸から頭の距離を約40cmとして重力を求めると、
6.67×10^(−11)×35000000÷((0.4)²)=0.0146 m/s²
と、ほとんど無視できる。
つまり、高密度天体による潮汐力とまではいかないが、胸元ばかりがやたら重苦しいことになる。想像すると中々気持ち悪くなりそうだ。
変身アイテムの中に変身に必要な質量が詰まっているとすると、彼らのような巨人にいつでもどこでもすぐに変身するには常にこの気持ち悪さに耐え続けなければいけない。
これは中々現実的ではない。
…まぁ、こんなことを考えなくても35000tを持ち歩けるわけがないのだが…。
となると変身アイテムはリモコンのようなもので、ポチッと押すと何処からともなく35000t分の必要な材料が届くのだろうか。うぅん、これも微妙たと思う。怪獣がずっと同じ場所に出現しくれれば良いのだがそんなわけはない。すぐに変身できなければならないので35000t分の材料を乗せた乗り物がずっと変身者を追跡し続けることになる。かなりの運搬コストになり、これもまた現実的ではない。
要するにそれだけの質量を運ぶのがかなり大変なのだ。これを解決するにはどうすれば良いか。無茶苦茶簡単、体重を零にすれば良い。今一度彼らは一体何と呼ばれていたか、よく思い出して欲しい。
…そう、「光の巨人」なのである。電磁場の媒介粒子である光子は質量がない。「光の巨人」であれば良いのなら寧ろ35000tである方がおかしい。
変身アイテムはリモコンのようなもの、という設定は良さそうだが、物質運搬の指事出しではなく、出現したい場所に電場や磁場を発生させる衛星のようなものを起動させる機能を備えたもので、「光の巨人」は電磁気学、ないしはそれを加味した量子場理論とかで記述できる存在。
…なのではないか、と思う。
超人化計画(箇条書き) 金星人 @kinseijin-ltesd
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