第34話 嘘だ
「よっしゃ!
戦争開始から約一週間。中立域の東方、北方、西方が出した広報誌によれば、優勢は中央であるとのこと。
「よし、これもキバ達のおかげだな!」
中でも一番戦果をあげたのが中等部一年一組。
「これほらいけるって!うちのクラス最強だって!」
「・・・これもひとえに、フラー先生のおかげだな」
「キバ、謙遜すんなって!」
「そうだぞ、ほぼお前の手柄みたいなもんだ」
「ちょ、フラー先生!やめてくださいよ!」
「まーいいじゃねえか!お前が一番働いてんだ!かーっ、こんなの嬉しいかぎりだねえ!!」
「だからといって一杯ひっかけるな先生!!」
さらりと瓶を開けて一杯ほど呷り始めた先生。この調子だと酔いは早くまわりそうだ。
「・・・こんなの放っておいて、作戦会議始めましょ、キバ」
「そうですね・・・とりあえず寝かしとけ皆」
「アイサー!」
爆笑する皆をよそに先生は眠りこける。
「・・・まったく、もー・・・」
「ははは、まあフラー君らしいと言えばらしいか」
「笑い事じゃないですけどね・・・さぁ皆、はじめるよ!」
「おー!」
「まかせろー!」
(・・・まったく、頼もしい限りだ)
「ポート、いけるか?」
『いけるいけるー!じゃー寝るねー』
「おー寝ろ寝ろ」
『ぐー、すー・・・』
「・・・本気で安眠ですか」
このまんま永眠しないことを祈るばかりだ。
『くっ、くふっ、ふふあはは・・・』
「・・・来たッ!!」
『あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!』
「うーわきたよ、きちゃったよ」
そう、ポートは危機的状況で寝ると馬鹿笑いしながら起きる習性がある。
「よしやれポート!」
『ははは、任せなぁっはははははっは!!!!』
濃密な魔力が生成されるのが、魔道具越しにもわかる。
『あはははっははははは!!!〔回れ巡れ、永遠に〕ぃ!!!<
狂乱ポートは制御が効かない。
故に普段優しすぎて使えないような第二段階を使わせるためにたがを外させる。
(しっかしポートも承諾したとはいえ、中々非人道的だな・・・)
少しどうかとは思うが、今は何も考えない。
『一人二人三人!!!はっはあ、まだまだいけるぞオラオラァ!!!』
「しっかし、だーいぶ変わってるなー」
『あ!?なんだおい!?』
「いや、なんでもない」
(頼む、ここでできる限り倒してくれ・・・)
『・・・っ、やべえぞキバ、一番強そうなのがこっちくる!!!!!!』
「は!?・・・くっそ、<転移>!!」
念のために仕込んでおいた転移魔法を使い、ポートのもとへと飛ぶ。
「ポート!!!!!!」
「あぁ!?キバ・・・か・・・ぐー・・・」
「よし寝た!!!」
キバを見て安心したのか、ポートは眠りへおちる。
「キバ!回収!」
「すまん任せた!」
ゲインの神速回収。第二段階を使用しているのでまさに目にもとまらぬ早技だ。
「・・・うわほんとだ、本気で危険な奴がこっちに来てるな」
<索敵>はある程度敵の強さを推し量れる。
この生徒の波の中に、恐ろしく強い者が二名いる。
「・・・気配はビンビンに感じるな、これなら間違い無く『バケモノ』と『不確定』だろ・・・!!」
ソバー曰く、本陣の強そうな奴、一人は『バケモノ』と言える奴、そしてもう一人は
『
判断するには材料が少なすぎる。そのうえ容姿すらコートとフードに覆われて分からない。不確定要素の塊。
「・・・普通は大体わかるけどな、かなーり隠蔽されてる」
『・・・みたいだな、勝算は?』
「あるわけねえだろクソが」
索敵に対して巧妙に自分の能力を隠蔽する。相当の手練れだ。
「まずは、この生徒の波を処理しねーとな」
刹那、黒い影が波に突っ込む。残像が見える程の速さで腕を振るい、大量の生徒を倒れさせていく。
「カイン!!」
「いや俺ほんともう死ぬかと思ったわ!!めちゃんこ怖かった!!」
「悪い、付き合わせて!」
「いやほんと大丈夫、あとは師匠と
瞬間、何もない虚空から手が幾つも出現、倒れた生徒達が運ばれる。
「いやー、大量大量!」
「なんか殺処分する気分だけど、まあやるよ!」
ツルギとナツキが、運ばれる先にいた。
「キバ!本気でいけよ!」
「だいじょーぶ!私達強いから!」
「はい!!」
二人を信じることにしたキバは、
「・・・いた、やっとみつけたぞ、キバ・ロンギ・・・!!」
「あっははは、いたいたぁー!さぁ、お楽しみの時間だねぇー!」
手が震える。動悸、息切れ、めまいも止まらない。
「・・・俺は、こっちだぞ!!!!!!」
精一杯の闘志を振り絞って、駆ける。たまに体が宙に浮いても、駆ける。
「はぁっ、はぁっ・・・!!!」
校庭、大樹の森近辺。全力疾走でここまでたどり着いたキバ。
「ふむ、平凡小僧にしてはよくやる」
「普通は走れないものなんだけどねぇー!これだから遊び甲斐がある!!」
高笑いと荘厳な響きが、キバを内側から破壊する。
「・・・けほっ、で、出てきてください!!」
「はいどーも!呼ばれて飛び出てこんにちは!」
「人使い荒いわね・・・ま、いいけど」
大樹の陰から現われたのは、スレインとジェム。
同僚の二人と対峙したログは、不敵な笑みを浮かべながら
「貴様ら二人が、俺に勝ったことがあったか?」
「ないな」
「ないわね。まぁでも今回は・・・」
そう言いながら、キバに向かって微笑んだスレインは――
「キバがいるもの♪」
「・・・嘘だ、俺こんなバケモノを戦うなんて聞いてない!!!!!!」
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