第33話 機械仕掛け

「前線に出るなて、どういう事だよ!?」

「どうもこうもあるか、お前は今狙われているんだ!」

「お前こそ何を言ってるんだ!?」

「俺がこの目とこの耳でしっかり聞いた!お前が狙いだ、連中!!」

「・・・やっぱりか」

「・・どういうことだ」

「一応分かってた。でも言わなかった」

「・・・どうして」

「余計な心配させたくなかった・・・ごめん」

クラスが水を打ったように静かになる。

「・・・なんで」

「・・・どうして」

「・・・ごめん」

「「「そんな大事な事、なんでもっと早く言わなかったんだッ!!!!」」」

「・・・え?」

「俺達、そんな事で罵るような奴らだと思ったか!?」

「クラスメイトが命賭けてんだ!!やんなくてどうする!?」

「大体、あんたは抱え込みすぎ!!ちゃんと話なさいよね!!」

「私、キバの為なら何でもするよ・・・?」

「・・・え、は!?」

「お前に足りない物!それは俺達への信頼だ!!」

「え、えぇえ!?」

ゲインに叫ばれ、焦るキバ。

「キバ、僕達が今までそうやって裏切ったりした事あった!?」

ポートに言われ。

「・・・キバ、疲れてるのなら寝なさい」

レイナに優しく諭される。

「・・・ごめんなさい」

素直な謝罪が、口から漏れ出た。




「ひ、ああああああああ!!!!」

「ふふ、ダメじゃない逃げたら」

逃げ惑う男へと近寄るのは蠱惑的な笑みを浮かべたスレイン。

「ほら、じっとなさい・・・!」

「や、やめろ来るなぁぁぁ!!!」

「・・・悪いわね、これも仕事なの」

「仕事!?仕事だって切り捨てるのか!?」

「えぇもちろん」

「や、やめうがあああああ!!」

転移の光が少し残った空間。その中でスレインは一人目を爛々と輝かせながら

「ふふふ、この構成をこうすれば、きっともっと能力の上昇が見込めるわね・・」

一人恐ろしい改良をするのだった。




「・・・ま、前線には行く許可も出たし・・・」

ソバーに全力で交渉し、外出権をもらったキバ。外をほっつき歩く。


突如、轟音が鳴り響く。


「は!?何今の!?」


音のした方向に向かう。

いたのはスレイン。

「ちょ、大丈夫ですか!?」

「?どうかしたかしら?」

「今の音ですよ!さっきこの辺で轟音が鳴り響いたでしょ!?」

「・・・それ、私ね」

「は!?」

「私の【武器】、『機械仕掛けの剣デウス・エクス・マキナ』の能力よ。こんな風に機械が動いてあんな爆発も起こせるって訳」

「・・・何そのでたらめ能力」

「あなたも大概よ・・・まぁ、こんな力は出ないでしょうけど」

どこか勝ち誇ったような顔で宣言される。

「まったく、俺も本気出せばこんくらい・・・」


「お!いたいた!」

「しかも例の呪いにお姉さん!これ俺ら勝ったな!!」

大歓声をあげる南方の生徒達、十数名。しかもガラが悪い。ナイフや剣を構えながらこちらへにじり寄る。

「・・・スレさん、できます?」

「・・・その呼び方は不本意だけど、やるしかないわね」

二人で剣を構え、臨戦態勢にはいる。

「・・・<索敵>展開、黒魔術魔力、錬成・・・!」

不利を承知で普段通り戦おうとするキバ。

「装填完了、各部異常無し、連結部、可動部の潤滑油の枯渇無し。よしいける」

確認を怠らないスレイン。

「おいおい、勝てると思ってるの?この人数相手だぜ?」

「質より量ってね!!!はは!!!」

気味の悪い笑い声をあげながらこちらへくる生徒。

「・・・<装填リボル・エクスブレード>ッ!!」

剣の鍔のレバーを引き、刃に液体を流し込む。そして剣を振り抜く。

太刀筋が爆発し、直撃や近辺にいた生徒が送還された消し飛ばされた

「よし、<黒剣術こっけんじゅつ分剣ぶんけん>!!!・・・あれ!?」

何故かいつもどおり動けたキバ。調整はしながらだが相手を分解する斬撃を放つ。

『どーやら平凡期間終わったみたいだな』

「いよっしゃあああ!!!こいこい!!」

テンションが上がり、どんどん敵の肉体スレスレを分解するキバ。当然殺したり腕を斬ったりはしていない。

「くっそなんだこいつら、強いじゃねえか!?」

「話が違う!?弱いって言ってたぞあいつら!?」

「ああ、もういやだ!!」

苦し紛れに投げた生徒のナイフがスレインの左肩を掠める。

「・・・・くっ!!」

散ったのは血煙ではなく、火花。

コートとシャツに覆われていたのは肌ではなく、鋼。

「・・・バレちゃった」

悪戯っぽく笑うスレイン。手袋や服で隠れて分からなかったが、確かに金属がこすれ合う音がする。

「・・・先の戦争で左腕と両足、失ったの。だからね」

独白、その表情は自分で自分を卑下するような顔で。

「・・・そうですか、でも状況は変わりませんよ!」

一瞬表情が翳っても、それでもこの状況を打破しようとするキバ。

「・・・こんな機械仕掛けの人間だけど、いいの?」

その声は、少し湿っていて。

「ええ、俺にとって大切な人ですから。俺の味方は、みんないい人だと思ってるんで!!」

大きな声で、断言して。すこし振り向いてにこりと笑う。

「・・・えぇ、ならその恩義に報いないとね!!」

どこかすすり泣くような調子のスレインだが、その顔は美しく笑っていて。

「・・・やるしかないじゃない」

決意を固めた。

「<変化・長剣状態ロングソード>」

機械仕掛けの剣デウス・エクス・マキナの刀身を延ばし。鍔のレバーを引く。

刃に薬液が充填され、青白く輝く。

「<機構神の怒りデウス・エクスプロード・マキナ>ッッッ!!!!!!」

校舎を分断するほどの爆発、散乱する瓦礫、舞い散る粉塵。

「けほっ、けほっ・・・うわ、これまたド派手にいきましたね・・・」

「ええ、どうせならやりたいじゃない」

いつものクールなスレインはどこへやら、少し熱い女性になって。

「教室に帰るわよ、あいつらに戦果を報告しないと!」

「ええ、帰りましょう」

すこしむず痒いキバだった。




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