第32話 やってられっか
「は、反動で平凡とか・・・」
『ま、戦線離脱しても指揮はできんだろ?』
「そういう問題じゃない!!」
『ま、頑張れや』
「裏切り者ぉぉぉぉぉ!!」
切実な叫びなど聞かず南方の生徒は攻撃してくる。
「くっそ、とりあえず魔法戦に切り替える!」
魔法戦用に鍛えた制御能力を使い、相手の剣士二人を倒す。
そのためには、どうすればいいか。キバの目には、しっかり見えていた。
(弱点は胸、頭、脚。局部破壊に適するなら手か・・・)
黒魔術は範囲が大きすぎる。こういうときは――
「〔荒れ狂え、暴嵐の風よ〕、<ブレスオブ・カタストロフ>!!!」
少し適正のあった風魔法。ひたすら初級魔法と中級魔法を練習し、そこから派生させた上級、とは言えない中級ちょっと上魔法。
前方に延びる渦巻く風は相手の胸と脚を呑み、相手の本陣へと
「な、こいつ剣士なのか!?魔術師なのか!?」
「どっちでもねえし、どっちもだ!!!」
そういいながら、魔力を練る。
(局所破壊、肩と手を狙う!)
「〔突き抜けろ、矮小の英知〕!!<
毛糸のような緩い風すら、淡い光を纏って加速し、一撃を加える。
「く、くああ!!!」
肩から少し血が滲んだ剣士は、苦し紛れに剣を振り、キバにひらりひらりと躱される。
「何なんだこいつ、ちまちまとこざかしい!!!」
「うるさい、〔西から東へ
中級風魔法、<
「・・・とりあえず、勝てたな」
『おいおい、お前いつの間にあんな事できたんだ』
「お前がいない間も練習してたんだ。特技を延ばすのは基本だろ」
『・・・やりすぎ』
「どこがだ。普通の奴なら上級まで収めるぞ」
『・・・つまり平均よりちょっとし』
「はい、次行くぞー」
「討ち漏らしやがったあいつらぁぁぁぁ!!!」
もう来るまいと思っていた残党がまだいた。
「ちっくしょ、さっきので魔力の大半使っちまった!!」
『しゃーない、剣術でいくぞ』
「だらっしゃやってやらああああ!!」
(か、完全な誤算だった・・・)
キバは満身創痍・・・と言う程でもないが、服の裂傷が酷い。
そして何より、残党が多すぎる。
(・・・むぅ、これ俺生き残れるか・・・?)
そう、今キバの元へ来てる生徒は約十名。対するキバは切り札が縛られている。
「・・・ここさえ抜ければ、こんな奴らいつでも倒せるんだが」
「おい、こいつが噂の!」
「倒せ倒せ!!」
「だーちっくしょ、何だよこいつらぁぁぁ!!!」
続々人数が増える。キバは逃げるのを選択した。
「敵前逃亡、別に戦犯認定されないしぃぃぃぃぃ!!!」
死体蹴りだったりそれは人としてどうなんだ、といった行為をした者には戦犯認定が行われ、この戦争が終わった後に厳重処分を食らう。
しかし敵前逃亡は認定されないのだ。
「しかも!!ここ!!行き止まりじゃねえか!!」
昔読み聞かせてもらった猫とネズミの物語のようだ。
「くっそ、こうなったら黒魔術で崩壊させ・・・」
発動しない。
「だあああああああもぉぉぉぉぉぉぉぉぉやってられっかあああああああ!!!」
自棄を起こしたキバ、全力で剣を縦横無尽に振り回す。
「畜生めえええええこんなのやってられっかぁぁぁぁ!!!」
自棄のはずなのにきっちり向かってきた奴は戦線離脱させているのがキバの素晴らしいところである。
胴でも腕でも肩でも。所構わず斬る。
「ぐあああ!?」
「なんだこいつ、やべえ!!!」
南方の生徒もびっくり、廊下の狭いところでどんどん離脱させていくキバ。
「ああああああ!?!?!?!?」
「ちょ、アルロ君あそこ!!!」
「な、居たいた!!キバァ!!お前自分の身、守っとけぇぇぇえ!!!」
タマモとアルロが全力でキバの元へ向かう。
「はっ!!わかった!!〔護れ〕、<闇夜の盾>!!」
詠唱を短縮しながらも防御を張る。
「やりますよアルロ君!!!」
「ああ、任せろ」
アルロが矢を番え、引き、タマモが詠唱を始める。
「「術式展開、《
アルロの弓から放たれた十数本の氷の矢は、霊界から持ってきた冷気を帯び、壁や生徒に突き刺さる。
「う、ぐぁ・・・」
「・・・げはぁ」
突き刺さった生徒も突き刺さらなかった生徒も、一人二人と倒れていく。
「・・・おい、なんでこんな倒れてる。そしていつの間にコンビ技なんて習得した」
「お前が頑張ってる間、俺達も頑張ってたんだ。最強のコンビ見つけて、練習してた」
「とかクールぶってますけどさっきアルロ君めっちゃ焦ってたんですよ」
「・・・タマモォ?」
「ひっ、ごめんなさい!!!」
「・・・そういや、残りは?」
「脳筋コンビとミリウノ姉妹が片づけてる」
「なるほどね・・・さ、拠点に戻るか。ありがとうな」
「・・・お前は俺達の司令塔だ、失う訳にはいかない」
「ふむ、あのキバとか言う小僧、あそこまでやれるか。あの自暴自棄な状況で」
「何を言うかアスモ、そのような事があるから恐ろしいのであろう」
「まあ、我々にかかれば奴も一握りですな」
「ふむ、油断はせぬことだ。かみつかれるやも知れん」
(・・・連中、キバが狙いか・・・?)
ソバーが偵察に来ているのは南方学園、本陣。
クラスメイトにも南方の生徒にも気づかれずにここまで来れた。
(あとは、聞くだけ聞いて、帰るだけ・・・!!!)
「・・・おや、ネズミがいるようですね」
(ッ!!!まずい!!!)
こちらに向かってくる相手の(多分)強い奴。
(発動、『
気配まで消せる「第二段階」でどこまで機能するか。
(頼む、気づくな・・・!)
「・・・ふむ、逃げましたか」
なんとか感づかれずに逃げ切ったソバー。この情報は絶対に繋げる。
「はー、疲れたぁ・・・」
「お疲れ、さすがキバだな」
瞬間、ドアが凄い勢いで開いた。
「キバ!お前はもう前線に出るな!!」
ソバーが、ものすごい剣幕で叫んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます