第31話 開戦

開戦の音は炎魔術の着弾で始まった。


舞台は中央士官学校内、そして近辺の敷地だ。

「開戦!!!」

そして南方の生徒が一発の炎魔術を放ち、学校の壁に着弾。これが開戦の合図となった。

「迎撃しろ!」

「相手は前方に堅そうな奴らおいてきたぞ!!!」

「よっしゃ、砕け!!!」

学年も性別も関係ない。ただ『勝利』に向かって突き進む生徒達。

青春をかけた戦争が始まった。



「グレム、用意いいか!?」

『おうよー!良い感じのポイントだぜー!』

通信魔道具で連絡を取り合うキバ達。各教室が各クラスの拠点となっている。

グレムは今、正門近くの西校舎の屋上に立っている。

「じゃあ、そこから見える一番強そうな奴は?」

『陣の真ん中あたりに扇動してる奴がいるな、あいつがいなきゃ統率崩れるぜ』

「よしゃ、そいつ撃て!」

『任せな!<溶岩の弾丸バレット・オブ・ラーヴァ長距離弾ライフル>!』

そして聞こえる弾丸の音、崩れた相手の統率が魔道具の向こう側から伝わる。

『やったぜ』

「おつかれ」

初っぱなも初っぱな、統率を崩された南方は戦線離脱する者が続出した。



「ただいまー!」

「お!今回の立役者が帰還したぞー!」

「おつかれさーん!!!」

ゲインの帰還に喜ぶ一組。

「キバ、連絡」

「ああ、どうした?」

「・・・さっき上から見たんだが、相手の戦力ってのがある程度わかったんだ」

「お!それは嬉しい誤算だ。で、どんな感じだった?」

「見てる限り生徒に関しては俺達と同レベルくらいだ」

「・・・生徒に関しては?」

「・・・有志連合の中にバケモノがいた。双刀を持った、まさに武神といった奴だ」

「・・・武神」

「そいつ、間違い無くログだな」

「ほぼ確定ね」

「・・・あ、あなた達でしたか」

教室に入ってきたのはジェムとスレイン。

スレインは<帝国魔術師エンパイア・剣士部隊オーダー>の長で、凛とした女性だ。

「あのバケモノを武神って言う子、初めて見たわ」

「ま、間違ってはいねえけどな」

「・・・どういう事です?」

「僕達三部隊の一つの室長だ」

「それも最強のね」

「・・・勝てるんですか?」

「今のところ」

「勝ったことないわね」

「・・・えー」

クラスに一抹の不安がよぎる。


「討ち漏らしだー!南の残党が教室方面へ行ったぞー!!!」

「は!?残党!?」

「あ、だいじょぶ」

ジャスティンが間髪入れずに答える。

「まぁまぁ、ここは静かに待ってなって」

「何でだよ!?」

「・・・ま、廊下見てみ」


「な、何だこいつら!?」

「嘘だろ、転移しねえ!!生徒じゃねえのか!?」

南方の生徒が何者かと交戦中。しかしいくら攻撃されても人型は消えない。

「あの人型、俺の新技!<人型糸製戦闘人形ウールウォードール>!」

「なるほど、それなら確かに倒されねえな」

「いやまあ限度はあるけどさー・・・それにほら、打ち損じた」

「暢気に言ってる場合か!倒すぞ!」

幅が小さい廊下での戦闘は至難の技だ。

「くっそ、<索敵>開いて、<呪縛術・黒帯>!!」

相手を縛り、剣で一撃――

「・・・あれ、剣がろくに振れない・・・!!!」

何故か剣が上手く振れない。

「・・・な、なんで」

『おい、お前それ反動じゃ・・・』

「は、ウロボロス何を言ってる!?」

『お前ここ数ヶ月ずっと非凡だったろ』

「あ、ああ・・・」

『多分、その反動で今から平凡だぞ』

「ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!」


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