第30話 たたき直す

「まず走れ!」

「イエッサー!」

7月22日。あの集会の翌日、フラーのクラスの生徒達は全力で鍛錬をしていた!

「おらキバ!お前もっといけるだろ!!!」

「はい!!!」

「女子軍団!そんな遅かったら相手の男子の餌食だぞ!」

「は、はぁ~い!!!」

「ゲイン!足に電気を流すな!」

「うげっ!バレた!」

「ポート!お前はもっと体力つけろ!!!」

「は、はぁ~ぃ・・・」

「・・・おい、ソバーどこいった」

「え?・・・ほんとだ、いねえ!!!」

「野郎逃げやがった!」

「駆逐だ!」

「それはダメだろ・・・」

「おい待て、気配があるぞ!」

「第二段階使わなかったのが運の尽きだな!」

「・・・くっ、バレた」

「逃がすな!」

「追え!」

「おえぇぇぇぇ」

「吐くな!戻すな!」

「うわああソバー速いぃぃぃぃぃ!!!」

運動場は、阿鼻叫喚の地獄絵図。唯一ケロりとキバが淡々と走っている。

「き、キバさらにスピード上がってね・・・?」

「そうか?俺は普通だけど」

「狂ってやがる・・・」

「ちょ、誰かソバー追え!!」

「おえぇぇぇぇぇ」

「だから吐くなって!!」

「・・・〔逃げるなソバー〕、<呪縛術・金縛り>」

「・・な、動かねえ」

「もう逃がさねえぞ、ソバー・・・?」

「僕達が頑張ってる間、何してたのかな・・・?」

「・・・落ち着け、人間は会話が成り立つ種族だぞ?」

「元凶は!!!」

「お前だぁぁぁぁ!!!」

ゲインとポートの鉄拳制裁。ソバーはふっとんだ!

「あ、疲れた方は回復させますよー」

保健室のナイチ先生特製の回復薬には疲労回復、筋繊維増強、テンションハイになるなど、様々な効能がある。

「あっはははは!今なら何でもいける気がするわ!」

「落ち着けレイナ」

キバだけが落ち着いているこの状況。まさに日頃の鍛錬の賜物だろう。

「よし走るのやめ!息が落ち着いたら物理組は素振りなど!魔術組は魔力のコントロールにあてろ!!!」

「イエッサー・・・!」



「き、キバ・・なんでそんな振れんのさ・・」

「しかもキバそれしながら魔力コントロールしてるぜ・・・」

「これぐらいやれねえと俺は戦えねえ・・」

右手はウロボロスを振り、左手は魔力くろまじゅつをコントロール。

「・・・魔力コントロールが甘いな、気を張り詰めて・・」

「しかも自己分析までしてやがる・・・」

張り詰めた顔をするキバ。その顔を見たゲインは

「・・・ちょっとかき乱してみるか」

小石をキバに投げた。


とんだ小石は靄に止められ、砂になった。


「・・・は?」

その場にいた生徒達は『訳がわからない』と言いたげな顔面で硬直した。

「・・・悪い、ちょっとやらかした」

キバの説明によれば、常に周囲に『索敵魔術』を張っていて、それに触れると体から靄を放出、さらに先ほどコントロールをミスした黒魔術の魔力が衝突。

黒魔術の特性である『物質の結合破壊、分解』が発動し、砂になったのだそうだ。

「ほんとごめん、俺最悪お前ら殺してた」

全員の血の気が一瞬で引いた。


突如として、キバが魔力を放出、近くの木に着弾させ、木を壊す。

「ちょっと~キバ、なにやってんの~」

「よく見ろ、誰かいる」

そこにいたのは、青ざめた男子生徒。この学校とは少し違う制服を着ている。

「誰?」

「な、南方士官学校の生徒だ・・・」

「・・そうか、『戦争』前の視察は違反だって、知ってるよな?」

「あぁ・・・」

声は酷く震え、目にも畏怖の色が浮かんでいる。

「・・・今すぐ帰れ。このことを口外するな。もしすれば・・・」

崩れ去った木を見ながら――

「お前も、ああするぞ?」

その一言で十分だった。

「ひっ、ひああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

男子生徒は這々の体で逃げ出し、訓練には平穏・・・ではないが、再会された。


演習、実技、基礎。全てをたたき込んで迎えた7月28日。


学院間戦争、開戦。

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