第11話 突然の来訪と修行

「はい、おはよ」

何気ない朝。今日も一日の始まりだ。

「今日は一限から遠隔操作魔術の授業があるから、その用意を」

「失礼~!この部屋に、キバって子、いる?」

朝の連絡は入ってきた見知らぬ男により中断される。

「あ、あの~、あなたは?」

先生、やんわり質問。

「ああ、私はツルギ。そうさなあ・・・キバくんの師匠になる人、かな?」

「・・・はぁ!?え、俺ぇ!?」

そう、キバは何も知らない。それどころかいきなり来て「師匠」とかありえねえ・・・って感じなのだ。

「いや、何も聞いてないんですけど・・・」

「え!?言ってなかった!?・・・えええ・・・」

「いやそれこっちの台詞なんですが・・・」

そういうよくわからない事にも耐性のあるクラスメイト達ですら唖然としていた。

「・・・よし、キバ、行ってこい!」

「え、先生!嫌ですよ!?」

「・・・だってお前が行けば円満解決じゃん。俺こんな面倒くさい人と関わりたくないし(ボソッ)」

「おい!聞こえてるぞ!」

「お、先生からの許可もいただいたし、じゃあキバくん行きましょ!」

「い、嫌だあああああああああ!!!!!」

ツルギに引きずられ、教室を後にするキバ。

「じゃあな~、武運を祈るぞ~!」

「せ、先生の裏切り者ぉぉぉぉ!!!!」

生徒達は最後まで唖然とするだけだった。



「こ、ここは・・・」

「驚いた?ここはバハミー山脈。私達の家、というか拠点があるんだよ」

士官学校から走って2時間。そびえ立つ山脈は荘厳な雰囲気を醸し出す。

「きょ、拠点・・・?」

「まあ、ここには修行で来てもらってるし、早速やりましょう」

「えぇ・・・何をやるんですか?」

「そうですね・・・そうだ、拠点に来てもらおう。制限時間は・・・3日かな」

「3日!?絶対行けるだろ・・・」

「どうかな・・・ああ、言っておくけど、拠点は山の頂上だから」

「おう!じゃあ、いってきます!」

「あ~あ~、行っちゃったよ・・・言い忘れてた・・・」

ここで、ツルギが重要な事を呟いた。

「ここの魔獣モンスターは、街の近くの奴らの比較にもならない程強いのに・・・」


「とりあえず走ってきたけど、こっちだよな・・?」

上へ上がってる感覚はあるが、本当にこの道で正しいのだろうか。

「この辺、霧が濃いな・・・ん?」

近くで草むらが揺れた気がした。

「あれ?誰かき・・うげぇ!!」

魔獣、有角ゆうかくトカゲが現われた。

「なんだ、トカゲか。なら一息に?!」

ウロボロスを抜き、一閃するも、弱点の尻尾は切れない。

「堅・・・あ、」

トカゲは低い鳴き声と吐息を漏らしながらこちらを睨む。

「え、ちょ、やば・・」

次の瞬間、走り出したトカゲと逃げるキバ。

「畜生めがぁぁぁぁぁ!!!!」




「はぁ、今日で三日目、しかも夕方。これもう諦めるしか・・」

「おい、諦めるにゃ、早いぞ・・・」

呟いたツルギの前に現われたキバ。制服はボロボロ、体には傷が付き、泥にまみれている。

「な、何をしたらそうなるの・・・?」

「トカゲから逃げ、熊から逃げ、ウナギに殺されかけたらこうなった・・・ほんと、魔獣強すぎんだろ・・・」

あの苦行のような、寝ることさえ許されない状況を思い出したキバは、ツルギを全力で睨めつける。

「言う前にあなたが行ったんじゃ・・・。まあいいや、改めましてようこそ、我々「カースユーザーズ」拠点へ。・・・皆、出ておいで!」

そこに現われたのは、やたらスタイルの良いお姉さんと、アイマスクをつけた赤毛の少年。

「こんにちは。私はナギ。自呪じじゅは<魔力異常>よ」

「・・・どうも、カインです。自呪は<緊縛眼きんばくがん>です」

「そして私、ツルギ。自呪は<操手>だ。そして、君も自呪ももうわかってる」

「あの、自呪って、なんですか・・・?」

「ああ、自呪ってのは、私達の生来の呪いだね。この自呪を持つ者が呪術物品カース・アーツを扱えるんだ。君の自呪は、<永久とわ再生さいせい>」

「え、再生・・・!?」

「そうなんだけど、君はもっとすごいよ」

「何が、ですか?」

「君は、この国の太古の英雄の剣に、認められたんだ」

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