第10話 日常の風景
4月も終わり、早くも5月。
4月はなんだかんだいろんな事がこの士官学校で起こった。
精神操作魔術による教師の謀反に始まり、
しかし5月になればそんなどでかい事件は無く、階段踏み外して怪我する人が出たり、幽霊が出たと噂され、委員長が気絶したり。
あとはクラスのヤンキー軍団が先生と「どの甘い物が最高か」と言って乱闘を起こし、先生が減給されたりしたくらいだ。
今日は5月13日。一日の様子を覗いてみよう。
朝5時。
一番始めの登校者が現われる。
「おはよ~!って誰もいねぇか!」
キバだ。毎朝の鍛錬は絶対にサボらない。
「さぁて今日も練習すっか!」
「いいね、僕も混ぜてもらっていい?」
声をかけてきたのはクラウディア。ものすごく普通の両刃の剣を持った、「平凡2号」。彼も、最近キバと一緒に鍛錬を始めた。
「オッケー、じゃあやるか!」
「うん!!」
剣を構え、走り出す。
右足で踏み込み、前へと振りおろす。
そしてそれを防ぐように、剣を横向きに、上へと上げる。
剣同士がぶつかり、澄んだ音を響かせる。
「うん!いけそうだね!<スラッシュ>!」
ちょっと斬撃を飛ばす。衝撃波のようなものが、キバを襲う。しかし、途中でその一撃は防がれる。
「<闇夜の盾>。お返しだ。<上段斬り>!」
上から振りおろされる剣。後ろへ下がり、クラウディアの体に傷はない。
「最初に比べりゃ、よくなったじゃねえか!クラウディア!」
「なんの!まだまだこれからだよ!」
そう言って、走り出す二人。ここから7時まで二人は剣を振り続けた。
朝7時。
「いただきます!」
購買で買ってきた朝食。メニューは、白パンと厚切りベーコンと目玉焼き。そして一番安かった葉野菜のサラダと、紅茶。
『強い体は食事から』がモットーのキバは、ちゃんと栄養バランスが整った朝食を食べる。
「よくそんな食べれるね・・・」
クラウディアは食パンにブルーベリージャム。
「いや普通に食えるだろ・・・明日はもうちょっと素振りするか」
いいながら、パン(ベーコンと目玉焼きを挟んだ物)を頬張る。
塩気と、ふわふわな感触、そしてそれを包む卵の味がたまらない。
「くぅ~、旨い!!」
「・・・ほんと、尊敬するわ」
朝8時。
シャワーを浴びて、教室に戻る。
「はい、じゃあ出席とるぞ~」
先生の声。出席をとる前に教室に入っていれば遅刻としてはカウントされないが、今日は休みの奴はいない。
それじゃあ、ここでクラスメイトの紹介といこう。
「アイギス」
「は~い」
アイギス・フォートレス。大地の魔法の使い手で、キバの幼なじみ。
「アルロ」
「・・・はい」
アルロ・サルティック。
「エラ」
「はい」
エラ・フローラル。花魔法を使う可憐な女の子。声が美しい。
「オーウェン」
「おう!」
オーウェン・ブラウン。クラス一のヤンキーだ。ちなみに情に厚い。
「カーター」
「うーい」
「アーティファクト」を操る少年、カーター・バルカ。
「キバ!」
「ういーす!!」
我らがキバ・ロンギ。
「クラウディア」
「はい!!」
平凡2号、クラウディア・ネルネ。普通の剣を持った、平均少し上の点数をとれる少年だ。
「クリス」
「はい」
盾を自由自在に操るのは、クリス・ギーディア。見た目は男の子だけど、ちゃんと女の子だ。
「クレナイ」
「いえーい!」
ハイテンションなクレナイ・ミリウノ。炎剣を使う元気な女子だ。
「グレムー」
「はーい」
グレム・リンダー。溶岩魔法を使い、弾丸のような技を編み出した。
「クロエ」
「ここに」
硝子魔法と体術の使い手、クロエ・ファンク。才色兼備な彼女のファンクラブがあるらしい。
「ゲイン」
「うーい」
電撃小僧のゲイン・スパーク。超甘党な彼は一度乱闘を引き起こした。
「シャオラン」
「イエッサー!」
脳筋1号、シャオラン・チョウ。魔法はからっきしだが、体術が半端ない奴だ。
「ジャスティン」
「てー!」
奇っ怪な返事をするのはジャスティン・オリオ。糸の剣の使い手だ。
「ジン」
「・・・イエァ」
小声でファンキーな、ジン・グニア。大砲と剣が一体化した「砲剣」を使う。
「スノウ」
「・・・・ぃ」
スノウ・ミリウノは、クレナイの双子の妹。あんまり声をださない。
「ゼノ!」
「ごん!」
ごっつい脳筋2号、ゼノ・ウォール。先生と戦って初めて気絶させられたらしい。
「ソバー」
「はい・・・」
ソバー・ステルス。最近透明になれた。趣味は休日のパン作り。
「タマモ」
「はい」
ロリッ娘霊術士、タマモ・アストラル。いつも猫の人形を抱っこしている。
「ノア」
「はーい」
動物と話せる少年、ノア・リーシップ。ウサギと一緒に登校だ。
「フォルト~」
「はい」
風魔法を扱う、フォルト・ウイング。爽やかさが売りだ。
「ポート!」
「はーい!」
たまに性格豹変する、謙虚な美少年のポート・マーズロイ。ピカトリクスがよく似合う。
「マサヒロ!」
「御意に」
東方の国、ヤマトからの移民、マサヒロ・ムラムネ。刀を持つとかなり怖い。
「メイソン」
「ウリイィ!」
狂人のような返事をするのはメイソン・クリート。創成魔法とか言う規格外の魔法の使い手だ。
「メイルー」
「何でしょうか?」
メイルー・ミロードは、厨二病の患者。使い魔を持ってる。
「リアム」
「はい!!」
委員長、リアム・ウィルス。物質を操作できる。戦闘能力はピカイチだ。
「リリィ」
「は~い」
百合の教祖、リリィ・フラワー。溶けた金属の魔法を使う。
「レイナ」
「何よ!?」
音楽大好き、レイナ・シンフォニー。歌わせたらクラス1だ。
「レイラ」
「はい・・・ふふっ」
レイラ・ヘランメ。キバの方を見て微笑むのは、キバが好きだから。
ちなみに当の本人は気づいていない。
「ロバート」
「おいっす!!」
ロバート・スタークjr。量産武器工場の息子で、なかなかの策士だ。
「はい今日も欠席いないな。元気がよくて先生嬉しいぞ!とまあ今日は一限が錬金術、二限が魔道具製作、三限四限が実習な。用意しとけよ!」
「は~い」
朝の出席確認と連絡も終了。これから授業が始まる。
ちなみに、この学校での時間割は、8時半からと、10時10分からの1時間半授業。その間に10分の休憩が入り、二限が終われば昼食時間となる。そして1時から三限、2時40分から四限というような時間割だ。
8時半。
錬金術の授業が開始だ。
担当講師はミズハ先生。容姿端麗な男の先生だ。
「今日はこの鉄塊を金塊に錬成してもらう!」
「おいおい!!できんの!?」
生徒達も四苦八苦。
古来、錬金術は形を変えるだけの魔術として扱われていたのだが、近年はその考えが革新され、金属の合成や、変質、また金属や物体そのものを作り替えるなんて事もできるようになった。
ただ、それでもやってはいけない事がある。
錬成した金を、売買することだ。
昔の形を変えるだけの頃から金は錬成できていて、その頃から錬成した金を売買する事は禁止されていた。富を独占、急に富豪が現われないようにする為だ。
儲けるのは自力で頑張った商人や、貴族のみとされている。売買した場合、牢獄にて2年以上は過ごすことになる。もしくは罰金刑だ。
「錬成した金は先生が回収するからな!自分で保存するとかやめてくれよ!俺が責任とるの嫌だからな!」
「しつもーん!先生、回収した金はどうするんですかー!?」
メイソンの質問。先生は
「・・・えー、鉄塊や銀塊に錬成し直し、俺の研究に使用する」
と、目を逸らしながら言うので
「先生!もしかして売ったんですか!?」
「これはまさか、罰金刑か!?」
「
「うるさい!誰が何を言おうと俺は金は売ってない!金は!な!」
「金は!?て事は、他のは売ったってこと!?」
錬金術の授業は、喧噪と共に過ぎ去った。
ちなみに真相は闇の中である。
10時10分。二限の魔道具製作の授業が開始だ。
担当講師のシンカイ先生は、「豪腕の
「お前ら、芸術性より、正確性だ!俺みたいに卓越した技術があれば、こんな事も可能だが」
そう言って3秒ほどで魔道具を組み立てる。しかも斬新な形で。
「おぉー!!」
「さっすが
しかし、煙を出して、ボン!
まどうぐ は ばくはつした!
「え・・」
「何が芸術性だ!あんたも正確性を持てよ!!!!」
「うるせえ!!俺にも失敗はあらぁ!」
「ちゃんと作れ!手本を見せろ!」
「おうやってやらあ!!」
今度は三十秒。ちゃんとした魔道具ができる。
「しかもこんなこともできる!」
『オチャ、ドーゾ』
釘を打つだけの魔道具があっというまにお茶も入れれる便利な魔道具に早変わり!
「って、いるかい!?」
「ふっ、甘いな・・・」
そこに、カーターが魔道具を持ってくる。
『オカシモドーゾ』
「今度はお菓子まで!?」
どんどん本来の目的から離れていってる。
「まだまだ!」
『オカワリ、イレマス』
「こんなもんじゃ!」
『アフタヌーンティーセットデス』
完全に目的を見失ったシンカイ先生とカーターの勝負が延々続き、この授業は幕を下ろす。
11時40分。昼食時間だ。
「うおおお!!購買ぃぃぃぃ!!!!」
キバは疾走していた!自分ぬ支援魔法をかけてまで疾走していた!
購買は早く行かねばパンがなくなるのだ!
「待ってろよベーコンチーズぅぅぅ!!!!」
お目当てのベーコンチーズは、一番人気なのだ!!
「おばちゃん!!ベーコンチー」
「売り切れたよ」
「ちくしょーーーー!!!!」
疾走アゲイン。今度は学食だ!
「うおおおミートソースゥ!!!」
今度もまた、一番人気のミートソースパスタ目当てだ。
疾走してる間に、ここの食事のグループについて。
主に四派閥に分かれ、弁当派、学食派、購買派、サバイバル派になる。
最後のやつに関しては、敷地内の森や川から採取して、その場で料理している。
さて、キバも学食に着いた。
「シェフ、ミートソース!!!!」
「ああ、さっきの人でソースがなくなったよ」
「嘘だそんな事ぉ!!」
泣きながら全力疾走。サバイバルはしたくないし、弁当も無い。
「ド畜生なんで今日に限って食えねえんだぁぁぁ!!!!」
叫びながら教室へ帰る。
「ああ、もうお腹いっぱいね・・・あら、キバ、食べてないのならいる?」
クロエは一応貴族。もちろん大きめの弁当箱に入れてきた豪華なご飯なのだが・・・
「え、いいの!?」
「ええ、口つけてないし、もったいないし。いる?」
「ありがたく頂戴します!!」
貴族風の豪華なご飯。パンはふかふか、焼いた鶏肉はジューシー。何より暖かい。
「あぁ、最高だ・・・!」
初めての快感。新しい境地を開いた瞬間である。
遠巻きに「あの野郎、クロエ様のご飯を頂きやがって・・・!」とか「俺は口つけててもいけるぞ!」などの声も聞こえるが気にしない。
午後一時。実習の時間だ。
「よしお前ら面倒だから全員一気にかかってこい!第二段階使用も許可する!」
「ヒャッハー合法的に先生をいじめれるぞ!」
「ヒャッハーキバ達時間稼いで!」
「ヒャッハー作戦立てるぞ!」
「ヒャッハーヒャッハーうるせえ!!」
という訳で作戦。
キバ達の第二段階と、皆の力で向こうの岩場まで後退させ、アレを使う・・・!
「いくぜ、<
「<
「<
「お、勢揃いか!だが甘い!<斬空・黒波>!」
黒い斬撃の波が、全てを呑む。キバは突っ込んでたので、モロにくらう。
「こっへぇ!?」
「キバ様!?おのれ、よくもキバ様を・・・!?」
「あんた、キバを斬るとかいい度胸してるわね・・・!?」
レイラ&レイナ、堪忍袋の緒が切れる。さすがに堪忍袋の緒が劣化しすぎだろうとは思うが烈火の如き怒りは止められない。
「死ね!<ビート・スラスト>!」
反響させた音を斬撃に変える荒技と、
「〔あいつを、じわじわといたぶれ〕、<
じわじわ効いてくる猛毒。
二人の憎悪が剥き出しだ。
「しょうがねえなあ・・・<タリア・ル・オッサ>」
第三段階、事実ごと斬る斬撃。反動で大きく後退。
「ちっくしょ、でも岩場までいったぞ!」
「ああ!かませ、タマモ!」
「〔我が手で、水面よ揺れろ〕。<魂震>!」
魂を揺らす技。たとえ先生でもこれならいけるだろ!
「あ、が・・・」
「やった、先生を倒した、ぞ・・・?あれ、先生?・・・先生!?」
先生、心肺停止。このあと保健室の先生にこっぴどく叱られた。
夜6時。
鍛錬を終えて、キバが帰ってくる。
「ただいま~」
「おかえり。今日は肉だよ!」
「やったあ!よっしゃ食うぞ!」
毎夜のようにアイギス特製の晩飯を食らい、夜は馬鹿騒ぎ。時には購買で軽食を買って、遊ぶ。そして泥のように眠る。
こんな日々が続くといいな、とキバは思う。
でも、平和な日々は早々に崩れ去ったのだ。
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