第6話 それぞれの戦い

「おいジャスティン、お前なんでピッキングできんだよ」

「元々細かい調整や、作業が得意だから。ほら、だから俺の剣はアレでしょ」

確かに、ジャスティンの剣は糸。何本にも増やせるし、太さも変えれる。しかしそれをするには、より繊細な調整が必要なのだ。

「・・・よし開いた!持って2分、早く入るよ!」

「おし!」

謹慎組7名、侵入完了。

「ジャスティンとグレム、ポートとゲインとソバーの三人組、俺とアイギス。それぞれ校内を周回し、侵入者がいれば退治。生徒、先生は救出。全員最善を尽くそう」

「ああ。できる限りをやろう」

アイギスの口調がしゃっきりした。本気なんだろう。

「あと、命を賭けるとは言ったが、絶対死ぬなよ。死ぬ寸前までがんばれ」

「あ、ああ・・・」

皆の言葉に少し間があった気もするが、気にしない。

「じゃあ、行くぞ!」




士官学校中等部1年1組。この教室では、激しい闘いが繰り広げられていた。

魔法を放つ侵入者。電撃、炎熱、鋼刃。様々な魔法が先生を襲う。

しかし、それを全てはたき落とし、逆に攻撃をしかける先生。その動きに無駄は無い。

「いい加減諦めてもらえませんかねえ!!」

「お前らは俺が見逃すと生徒に口封じをするだろ」

当分この応酬が終わることはなさそうだ。



「こっち方面が俺達の担当か」

チームグレム&ジャスティン。西校舎の探索だ。

「・・・怖いほど静かだなジャスティン」

「そうだなグレム・・・来た!!」

敵は背後からくるだろう。そう判断したジャスティンは後ろに糸を張り巡らせた。そしてまんまと引っかかった相手。

「〔糸よ、壁と成れ〕」

廊下に糸の壁を作る。

「斬ろうとしても無駄だよ。最高の硬度にしてる」

「・・・ちっ、めんどくせえ。なんでこんなガキの相手を」

「格の違いを見せつけてやれ」

相手も魔術師と剣士のコンビ。

魔術師は魔道書の色から見て白金属性だろう。

そして剣は爆発能力持ち。刻印術が爆発術式用だ。

先手は相手だ。

「おらよっと!!!」

「〔舞え、白金の薔薇〕、<プラチナローズ>」

爆発する剣が襲い、刃が舞う。

明らかに格が違う。

二人は感じた。

「つっ・・・」

「あ、破片・・・」

刃に切り裂かれ、破片が腹を殴りつける。

たったそれだけで、二人は動けなくなる。

(ああ、俺は・・・)

ここで死ぬ。きっと拒否はできない。

でも、死にたくない。死ぬなって言われたからには死ねない。

(俺は・・・)

「案外あっけないな」

「じゃあ、ばいばい!」

「俺達は・・・まだ死ねない!!」」

気合いで跳ね起きる二人。

(こいつらをなるべく遠距離から、倒す!)

(あの剣を避け、最善手を打つ!)

二人がたどり着いた、最適解せいかい。その思考が、彼らの力に作用した。

グレムがとった行動。人差し指を突き出し、親指を立てた右手。人差し指の周りに浮くのは、六個の溶岩の弾。まさに、銃のような。

「これが俺の魔術、<溶岩バレット・オブ・銃弾ラーヴァ>!」

そして、ジャスティン。剣から糸を放出し、天井に突き刺す。自分にもその糸を刺し、剣を構える。

「俺を導いてくれ、<自操人形マリオネット>・・・!」

【武器】の第二段階に至った二人。ここからの逆転劇が始まる。



ポート、ゲイン、ソバーの三人組。東校舎の探索だ。

「一応、ソバーの迷彩使うか」

「・・・まかせろ」

ソバーの武器『迷彩剣』。「カメレオン」とも呼ばれるこの【武器】。ほとんど不可視のこの力には、すこし欠点があった。

「いつでも迎撃できるようにコインは準備したよ」

「俺も。いつでもいけるぜ」

そして見えてきた、相手。相手も同じ三人組。

「僕が先手をっ・・!!?」

いきなりかまされる裏拳。衝撃のあまり、迷彩が解ける。

「お、やっぱり当たった」

「・・・何故、わかった」

「それ、迷彩剣でしょ。そんでそれを「不可視」だと思ってた」

当たり。ここで、ソバーは自分の失敗に気づく。

「正解は「見えにくく、認識しづらい」。見えない訳じゃない」

「じゃあ、ここはお仕置きといこうか」

「じっとしとけよ」

ポートは気絶している。ソバーは地に伏している。

守れるのはゲインだけ。

「黙れ。俺は、こいつら守んねえとなんだよ。だから、失せろ」

「俺がポートを危険に晒した。だったら、その失態は取り返す・・・!」

自分の覚悟と、失敗。第二段階を発動させるには十分すぎる条件。

「弾けろ、雷。<迅雷>!」

「今度は、絶対に隠しきる。<隠者の衣インビジブル>!」

全身に帯電したゲインと、何も見えないソバー。

二人の闘いがはじまる。

そして、ポートの覚醒も近づいていた。


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