第5話 学園、閉鎖。

「ああ・・・やることねえ・・・」

「あんな事しちゃったもんね・・・」

男子寮の一室。謹慎組は暇な時間をすごしていた。

この時、学園で重大な事件が起こっているとも知らず・・・



「あ~、おはよう。・・・おぇ」

全然爽やかじゃない挨拶。むしろ体調が悪くなりそうだ。

「え~、つい寮の馬鹿どもとふざけて減給くらった・・・」

「そういえば、あの7人は?」

「あいつらは一日謹慎だ。俺も泥酔して一緒に暴れたから減給。二日酔いもえげつねえ・・・」

(おい大丈夫か・・・)

クラスの心が一つになる。

「大丈夫ですよ。なんてたってこの私がいるんですから!」

高らかに宣言したのはメイルー。『使い魔』を操る魔術師であり、不治の病ちゅうにびょうの患者だ。

「この私に封印された龍が、この世の悪を焼き滅ぼします!」

「はぁ、ほんとメイルー可愛い・・・」

そう言うのはリリィ。女の子好きゆりの女子だ。

「あのなあ、そんなふしだらな目で女子見てるのお前だけだぞ」

彼の名はダリン。荒々しい剣には似合わない中性的な男子だ。

「そこ、うるさいぞ」

「はーい」

「すんません」

「一限は・・・剣術か。今日は座学だから、この前の錬金術で作った短剣出しとけ」

フラー先生の担当は実技と剣術。魔術師にもできる護身術を教える。

「はーい!」

そうして教室から出る。生徒達の用意を待つ間、自分も教材を取りに行く。

そしてこの後、激しく後悔することになる。



「この短剣、形が歪なんだよなあ・・・」

「そうですか?私はかっこいいと思うんですが」

「メイルー、これ切れ味悪くなるからダメだよ」

「だろレイナ!」

「やっぱりレイメイか・・・」

「「そんな目で見るな!」」

ドアが開く音。先生が来たと思い、静かにする生徒。

しかし彼らが見たのは驚愕の存在。

いつもの黒髪の先生じゃない、紫の髪。

その手には片手杖スタッフが握られ、笑いを浮かべている。

しかし、その目は笑ってない。

「はーい、じゃあ今から人間の死に方についてお勉強しましょ~う!」

明らかに声が裏返ってる。緊張してるのか、それとも、この状況を楽しんでるか。

「あんた、ここがどこか分かってる?間違えたでは済まされないわよ!?」

「分かってるさ。だって俺達は、ここの最上級呪術物品オーバー・カース・アーツを奪いにきたんだから」

教室が固まる。

だって、それはもう無いから。

しかも、クラスメイトが持っているから。

最悪、自分が死ぬかもしれないから。

「ああ、あと、俺達でこの学校は占拠したから。無駄な抵抗はよしなよ」

そう言って、片手杖を向けてくる。

そこには、計り知れない「殺気」が籠もってた。

そして、勢いよく開く扉。

『ナイトメア』を携えた先生だ。

「おい、俺の生徒に、手ぇ出して無えよな・・・?」

「さあね」

「・・・全員見ていろ。珍しく俺が本気を出すぞ」

「へぇ、本気」

そう言って切っ先を向ける先生と、杖の先端を向ける侵入者。

数瞬の静寂の後、その戦いは始まった。




「・・・なんだか、変な感じだな」

ポートが、不意に呟いた。

「言われてみれば」

「・・・ちょっと見てくる」

ソバーが少し外の偵察に行く。

そして3秒で戻ってきた。

「学園敷地内に対外結界が張られてる!!多分、侵入者!」

ソバーが焦っている。本当の事なんだろう。

全員が武器を携え、外へでる。

「本当だ・・・」

薄く紫がかった、ドーム状の結界。

これが変な感じの根源なのだろう。

「おそらく、ほぼ全ての生徒があそこに・・・」

「どうすれば・・・」

皆がうろたえる。

しかし、彼だけはうろたえなかった。

「皆、俺はあそこへ向かう。」

水を打ったように静まりかえる。

「俺は行く。命を賭けて助け出す。その勇気がある奴だけ付いてこい。」

その声は微かに震えていて。

与えられた力はどこか歪で。

全てにおいて平凡な彼が出した、非凡な一言。

それは、皆を勇気づけるには十分だった。

「俺も行く。」

「僕も」

皆が彼の横に立つ。全員、己の全てを賭けて動くつもりだ。

「皆、行くぞ!!」

「ああ!!」

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