第4話 真夜中の戦闘。

ギルシュ帝国立士官学校。この学校は寮があり、家が遠い生徒はここに住める。

なお、家賃は無料だ。

当然、男子寮と女子寮に別れており、風呂やトイレも別々だ。

今日はその寮にスポットライトを当ててみよう。



「ふわ~、眠いねぇ、キバ~」

「俺は一人で購買に行くつもりだったのに、お前が勝手について来たんだろ」

「だって~キバ皆におつかい頼まれてたじゃん。一人じゃ持ちきれないでしょ~」

「・・・それもそうか」

「でしょ~」



「えーと、ポートが『おいしいクリームパン』。んでソバーが『ザルソバ』、これ確か東方の麺料理だよな。」

「そうだね~、えっと、グレムが『今夜の紅茶』だったよね。あとゲインが『ハイパープリンアラモード』、ジャスティンが『オーガ殺し』。ってお酒じゃん!?」

一応だが補足を。

グレムは溶岩の魔道書を持った魔術師候補、ジャスティンは糸のような細い剣を使う騎士候補。

そしてゲインは半端ない甘党である。

「ついでに俺もなんか買ってくか。」

適当な物をかごに入れて、お会計。

「8520ユーロンになります」

(うげ、高!?)

後悔してももう遅い。



「ただいま~」

「おう、上がってるぞ~」

「せ、先生!?」

「すまんキバ、先生来た時から酔ってた」

「え」

「そして『ナイトメア』を振り回しながらこっちにくるんだ」

「うん入れて正解!」

「でも~これ、通報もの?」

「とりあえず、飲ませろ!」

オーガ殺しを袋から取り出し、思いっきり煽らせる。

「うぃ!?zzz」

「よっしゃ寝た!」

さながら育児中の父親のような台詞だが、今のこの状況には当てはまりすぎている。

「よーし、じゃあ俺らも」

「プリンアラモード!」

「お、このケーキ、俺食べたかったんだよね!」

「おい、それは僕が」

「この紅茶、貰うぞ~」

「それは俺のだ!」

「よし、じゃあ外で決着つけようじゃねえか!」

「望むところだ!」

「紅茶は俺が貰う!」

「・・・ソバ」




という訳で始まった男子6人によるバトルロワイヤル。

魔術師が3人、剣士が2人。そしてその中間が一人。

一応実況は私、天の声が務めさせていただきます。

「〔弾けて混ざれ、俺の熱〕!<マグマ・ボンバー>!」

「〔おいで、流れ星〕!<シューティングスター>!」

構えた手から溶岩の弾を発射するグレムと、トスしたコインを流れ星のように吹っ飛ばすポート。

「はん、甘い!〔飛べ、電撃〕!<エレクトロ・スラッガー>!」

「〔よ~し、生えといで~〕<リズベリオ・テラ>!」

飛ぶ電気の斬撃と、巨大な岩の柱がそれを阻む。

「〔揺れろ、糸〕、<糸鋸>!」

「筋はいいが、甘い!〔あなたの影からこんにちは〕、<影斬り>!」

高速振動する糸の刃と、背後の影からの不意打ち。

交錯する魔術、剣術。彼らは純粋にこの馬鹿な時間を楽しんだ。

透明化からの奇襲、縛られ、斬られ、殴られ。

青春を謳歌していた。

しかし、災厄が訪れる。

「うぃ~、お前ら~、俺も混ぜろよ~」

そう、先生だ。

「ええ!?寝てただろ!?」

「いや、あの調子だとまだ泥酔状態だ!」

「・・・でも、あの包丁」

「大変だ!あれ、手加減無しだよ!酔ってるし!」

「はあ!?てか、あの手に持ってるのって・・・」

「お、俺のプリンアラモードぉぉぉぉ!!!」

そう、先生の手には『ナイトメア』と空になったプリンアラモードのカップ。

「お、俺の、俺の癒やしがぁぁ・・・」

「ああ、甘いもんは酒の後に限る!」

完全に酔っ払った先生の一言。ゲインの導火線に着火。

「手伝ってくれ。あのクソ教師をしばく!」

「おう任せろ!」

「あ、やんのか?」

「くっそ動きがよめねぐえっ!!」

「ジャ、ジャスティン!!」

酔っ払いほど読めない物はない。

「だらっしゃあ!」

「おい不用意に動くなグレム!」

「ん~、よっこら」

「げほぉ!?」

『ナイトメア』で斬り付ける先生。教師としてどうなんだ。

「ポート、回復頼む!ゲイン、アイギス、ソバー、やるぞ!」

「・・・ああ」

「いくよ~」

「俺のプリン!」

「よっしゃ!〔縛られろ〕!<呪縛術・月鎖>!」

空中に磔になる先生。

「やれ!」

「おう!だあらあ!!」

ガラ空きに胴に一発。のびる先生。

「ふう、なんとか静かにできた・・・」

「プリン・・・」

「また買えばいいだろ!」

こうして、かなり平和的にこのバトルロワイヤルは幕を閉じた。



ちなみに、この戦いに関わった7人は一日謹慎、先生は減給となった。

そして、この謹慎が鍵になるのだった。

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