第3話 組み手。VS先生
あの組み手の翌日。結局あの日は極度の疲労でキバは帰ってすぐに寝た。
そして今日は朝ご飯を食べていない。
「・・・腹減った」
「おいおい、飯食ってねーの?」
「なら、サンドイッチでもどうぞ」
「悪い!・・・うおお!旨い!」
「ローストビーフと葉野菜の簡単なやつだけど」
「俺の家寮だからこんなの作れない。・・・今更だけど、ポートって金持ち?」
「いや、4等貴族なだけで、全然お金持ちなんかじゃないよ」
「お願いしますポート様俺を養ってください」
「右に同じく。」
光の速さで土下座して懇願するキバとゲイン。
「あ、え、えーと」
「おら全員席につけー。学級朝礼始めるぞー」
「はーい」
こんな感じで、二日目の朝は始まる。
「えーと、今日はな、3限、4限と組み手がある」
「またですか?」
「いや、今度は俺と、お前ら一人のタイマン形式だ」
教室がざわめく。
「はいじゃあ1限は錬金術だから。準備しとけよー」
教室から「嘘だろぉぉぉぉ!!」の叫びが聞こえたのは言うまでも無い。
「はい、んじゃあ先に行っておくぞ」
恐怖の3限。皆が怯えながらフラー先生を見る。ドレッドヘアを揺らしながら、先生は説明を始める。
「俺の【武器】は剣だ。それも馬鹿でかい包丁。不用意に近づくとぶった切る。安心しろ。手加減しておく」
(安心できねぇ・・・)
クラスメイトの心が一つになった瞬間だ。
「踏み込みが甘い、懐がガラ空き。いい線行ってるが、まだまだだな」
「ぐああ!」
胸元を切りつけられ、29人目の敗北。
なお、切りつけられた生徒は即治癒術式を使える先生による治療が施される。
「意外と手応え無いな・・・。おい、30人目!キバ!」
「げ!バレた!」
「分かるんだよ。・・・何気にお前、一番期待してるからな。」
「ええ・・・」
「さあ、いつでも来い」
かくして始まったフラー先生との組み手。先生の手には巨大な包丁『ナイトメア』
が握られている。
対するキバ。いつも通り『ウロボロス』を持ち、手袋には魔方陣が浮かぶ。
「はい。・・・〔全てを縛れ、黒の呪い〕、<呪縛術・黒帯>!」
右目に走る少しの痛み。しかし、今やその痛みにも慣れ、安心感さえ覚える。
「ほう、呪術か。詠唱時間の短縮は素晴らしい。しかし、呪いも実体化すれば『物体』だ。」
『この世にあるほぼ全ての物体を断ち切れる』のが『ナイトメア』の能力。まさしく
「でも、斬った後は隙ができますよ!」
一息で一気に近づくキバ。ウロボロスを振る。
「惜しいな。声を出さなければ斬れたものを」
「残念、本命はこっち!〔再びの進行を〕!」
空間を転移する予測不可能な一撃。これにはさすがにフラー先生も意表をつかれた。
「なるほど、『魔術と剣術の複合』か。なかなかだ。」
「でしょうね。俺も最初使ったときは驚きましたよ」
「なかなかいい。しかし、君はこれを知っているかな?」
その瞬間、ナイトメアの切っ先を天に掲げ、
「〔
奇妙な感覚が訪れ、足下に霧が立ちこめる。
「これが私の
刹那の一撃。反射的にウロボロスで受ける。
「防ぐか。・・・なら、これはどうだ!?」
連鎖する斬撃。キバは捌ききるので手一杯だ。
「はあ、はあ・・・。防ぎきった・・・」
「まさか私も防ぎきられるとは思わなかった」
「だろうな・・・〔弱くして下さいません〕?」
「無駄だな。一応、私も講師なのでな」
「そうですか・・・なーんてな!」
「は!?」
「術式、展開!〔踊れ、踊れ、踊り狂え!私のダンスホールへようこそ〕!」
「・・・領域か!?」
「正解!<常闇の社交場>!」
黒魔術の異常増幅。これがキバの領域の効果だ。
「ほう・・この短時間で領域を習得したか!?」
「ええ!〔さあ、踊り狂おう〕。<狂乱舞踏>!そんで<逆鱗>!」
自分と剣の力を底上げする黒魔術。
「これで対等だ!〔縛られて〕!<呪縛術・
「む、この鎖は斬れないな」
「〔魔龍の怒りの一端を我が手に〕、<逆鱗激震>!」
大上段からの一撃。さすがの先生もよけれない。
「ふぅ・・・、これで、俺の勝ちか」
「そう言いながら油断するのがよくない。領域も解いただろ」
「え」
「お前の負けだ。敗因は油断。<刃風>」
「ごべぇ!?」
この日の組み手の勝者はいなかった。
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