第9話

「それじゃあ、もう一度だけ。犯人の顔を拝みに行くとするとか」

「え? 犯人に会いに行くんですか? 危なくないんですかねぇ」


「まぁ、こういうのの醍醐味だいごみは直接犯人に面と向かって『お前が犯人だ!』って言うのなんだから。宗次郎、自分の身は自分で守れよ?」

「やっぱり危ないんじゃないですか。しょうがないなぁ。ひとまず相手を刺激するような事しないでくださいね?」


 注意はしたものの無駄ですよね。「お前が犯人だ!」なんて言われたら、犯人じゃなくても怒りますし、犯人だったらもっと怒ります。


「それじゃあ、行くか」

「行くって……あ! 先生! 置いていかないでくださいよ!」


 先生がずんずん進み、そのすぐ後ろを轟さん。少し遅れて僕が続きます。あ! 先生今ポケットからお菓子出して食べましたね? 今度買う時は先生の苦手なものにしましょう。

 轟さんが受付に話を付けている間に先生は構わず目的の部屋へと進んでいきます。僕は轟さんの方も気になりましたが、先生の方がもっと気になるのでそっちを追いました。


「おい。邪魔するぞ」

「なんだてめぇは!?」


 扉を開けてすぐ声を上げたのは見知らぬ男でした。先生は構わず部屋の中に入ります。


「もしかしてお前が横尾か? ちょうどよかった。探すのが省けたな。それにしてもこんな時間から会社で酒か。保険金の前祝いか? それとも邪魔者が居なくなった祝杯か?」

「なんなのよ! ここは社長室よ! 出ていきなさい!!」


 さんが叫びました。どうやら僕たちを社員と間違えているようです。しかし、すぐ自分の誤ちに気付いたようです。


「あなたたち……なによ。なんなのよ! 社員じゃないあなたたちが勝手に入ってくる方が問題じゃない! 何自然な顔してんのよ! 出ていきなさい! 警察呼ぶわよ!!」

「ほう。いいんじゃないか? どうせ今頃、轟のやつが誰かに頼んで呼んでるだろ。それまで待つか? だが私は待たせるのは好きだが自分が待つのは嫌いなんだ。分かるか?」


 その言葉に絵梨花さんは鼻白みます。どうやら先生がこれから何をしようとしているのかに薄々感付いているようです。


「まぁ、自分でやったことなんだから全部分かっているだろうが、これは私の趣味なんだ。だから付き合え。どうせこれからしばらく臭い飯にそんなに楽しいことも無いんだ。私が楽しむのに貢献したってバチは当たるまい」


 うわぁ。先生自分が世界の中心にでもいると思っているんですかね? 絵梨花さんも浮気相手の横尾さんも顔が真っ赤ですよ? 大丈夫なんでしょうか。

 あれ? そもそも絵梨花さんと横尾さんは怪しいけど、アリバイがあるから無理だって話じゃなかったんでしたっけ? 先生、大丈夫ですかね。轟さんみたいに理由は私の第六感だなんて言ったら怒られるだけじゃ済まないですからね?


「それじゃあ、まず初めに、どうやって社長が車の中で死んでたのかを当ててやろう。否定はするな。お前らは黙ってそうだと頷いていればいいんだ」

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