第62話 土吸って、地下に潜って、石集め

 ロフニス像の周りをピラミッド型の砦で覆うことで、上空攻撃による直撃を防ぐことが出来た。

 けど、普通の岩キューブ1個だと、防げるのは1回のみ。


「だったら2個にしてみよう!」


 とてもシンプルなユイの提案は無事採用となり、ロフニスと力を合わせて銅像の上にキューブが二重になるように砦を一回り大きくしてみた。

 そして次の攻撃。


 ヒューッ……ズドォォォォォンッ!


 結果は……。


「1個残ってる! やった!」


 イエーイ、と両手を挙げて無邪気に喜ぶユイ。

 たしかに、この調子でキューブを三重、四重にしていけば、攻撃の耐久性・耐久回数は増える。

 だが……。


「ユイ、ちょっと聞いて」

「ん? なに?」

「たしかに、単純に計算すれば、キューブの個数分、上空からの攻撃を防げる、ってことが言える。けど……」


 ロフニスは、そのやり方のデメリットを挙げた。


 まず、必要となるキューブの個数が膨大になってしまうこと。

 例えば、銅像の頭上に直列で3個並べるのであれば、必要なキューブはそれだけで済むが、安定性や建築の実用面からいってそれは無理。

 となると、ピラミッドを丸ごと三重、四重にしていかなければならず、必要となるキューブの数も、手間も、倍々で増えていく。

 

 すると、時間がかかる。

 これから7日間も凌がなければならないこと、それに攻撃はどんどん強くなっていくことを踏まえると、いつか”ピラミッドを作る時間を、攻撃の時間・威力が上回る“なんて事態になりかねない。


 なんと言っても、キューブは勝手に生まれるものではなく、岩などから切り取る必要がある。

 この辺りで1番大きな岩が、最初にふたりが石取スキルチョーカーで切った岩で、それ以外にはポツンポツンと小さな岩がいくつかあるのみ。

 遠くから運んでくるのは現実的では無い。


「──というわけで、残念ながらユイ案は……却下で!」

「がーん!」


 説得力しかないロフニスの意見に対し、ぐうの音も出ないユイは、大げさにショックを受けたポーズをとるしか無かった。


「ははっ、まあでも、色々な提案をしていくことは、最適な答えを見つけるための近道でもあるし、これに懲りずどんどん出してね!」


 優しいフォローを入れるロフニス。

 ユイは何事もなかったように、「うん!」と元気に返事をした。 

 そして、うーんうーん、と少し考えたあと、早速新たな案を思いつく。


「石取スキルチョーカーってめっちゃ便利だったじゃん? やっぱ、宝箱に入ってたアイテムを活用するべき……ってことだよね?」

「うん、そう思う! もう一度、改めて見直してみよう!」

「おー!」


 ふたりは仲良く行進しながら、宝箱の前に移動した。

 コピー銅像と、石取りスキルチョーカーは既に使用済み。

 残っているのは……。


「〈アイテムの種×3〉と〈亜空間式土吸い掃除機〉と〈地下専用魔法陣エレベーター〉だね。アイテムの種は、たぶん土に植えて水を与え続けると、何かのアイテムを入手できるんだと思う」

「へえ、それじゃ、今すぐ使えるのは掃除機とエレベーター、ってこと?」

「うん。この2つのアイテムの名前から、単純に考えると──」

「はいはい、分かった!」


 ユイは、授業中に先生の問題を答える時のように、元気よく手を挙げた。


「ほほう、それじゃユイくんどうぞ」

「掃除機で土を吸って、地下に潜ってく! そんでもってエレベーターで移動する!」

「おお、正解! それじゃ、なんで土を掘って地下に行く必要があると思う?」


 まさかの追加質問に、ユイは「あ……えっと……それは……」と、もじもじしだしてしまった。

 何となく、地下にも岩があったりして、それを採掘したりするんじゃないか……と、ぼんやり思い浮かんではいるものの、それだと地上の岩を探すのとそれほど違いがないような気がして、正解とは思えない。


「まあ、ちょっと難しかったかも? 僕の考えを言っちゃって良い?」

「どーぞどーぞ!」


 そんな反応はとにかく早いユイであった。


「この世界では基本的に、地下深くに行けば行くほど、レアなアイテムや装備品が手に入る、と言われているんだ。つまり、地上にあるものよりも、耐久性が高い石や岩がある可能性が高い……というわけ!」

「おお、さすがロフニス先生、めっちゃ分かりやすい!」


 ユイからのストレートな褒め言葉に、「そ、そうかな、でへへ」と照れまくるロフニス。


「そんじゃ、さっそく掃除機で吸ってみよう!」

「お、おう……」


 と、自分から地下深くに行く意義を説明しておきながら、なぜか乗り気じゃ無いロフニス。

 その理由は……。

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