一話 Bパート・チャプター14/二回目
「三百、 三百ためるのに、 大学だしてもらってから、 いままで、 かかったのに!」と、アスファルトにまたくずおれるタカハシ(27)は、つめを立てようとする。「日ごろからつかわないように、 してたのにぃいいいいいいいいああああああああああああああ!」
「知らないし、」と、サキちゃんはわずらわしくなって、顔をしかめて。
まわりにでき始めた野次馬、衆人環視にイライラして、視線を走らせながら、肘を抱いて、タカハシ、もといダメハシを見下ろして、歩み寄りながら、
「そういうのいいからもう、ちょっと、 立ってもらっていい?」と、声をひそめて言う。
ううぐ!と、タカハシ(27)はうめきながら、顔を、わずかに地面からはなして、向ける先のない憎悪を、とりあえずサキちゃんにむけようと、おもてを上げ、
目の前に立っている、
セーラー服の、スカートの中身を、あおぎ見て、
影の中にある白さと、どこか幼げな、輪郭のぼやけたフリルに、目を奪われ、
わかりやすく、ちょっとだまる。
「なに?」と、ドヤ顔でつめたくサキちゃん。
タカハシ(27)は、眼を逸らし、「見えてる」とだけ、口に出して、
一瞬、サキちゃんが、呆気に取られて、
ぽかんとしたあと。
あわててスカートを抑えて「かんがえられない!」と、まっかになって叫びながら、後ずさりし、「サイってータカハシ!なに?!サイってー!きもっ!目ぇとったほうがいいんじゃない?!」と、わめきはじめる。
「う、 るっせえ!こっちは三百万なくなったあとなんだぞ!わかってんのか!」四つんばいで大人げなくほえる、タカハシ(27)。
「わたしの!したぎと、その、関係ないでしょ?!ソレ!」と、真っ当なことを言う、サキちゃん。
「おまえのパンツなんかなぁ!どうだっていいんだよいま!」と、TPOをわきまえない、タカハシ(27)。「かねなくなった方が大事ですから!あ?!そんなこともわかんねえのか!」
「ッ!はぁ?!」と、それはそれでなんだか腹が立つ、サキちゃん。
ひでえ痴話喧嘩、と、野次馬から苦笑がもれる。
「そんなパンツなんざなぁ! カネあったら何枚でも買えるだろうが!」
「何さっきっから?カネかねカネかねソレしかいえないわけ?!なにほんっと、きったないオトナ!」」
と、サキちゃんは衆人環視を見まわしたあと、
両手を広げて、
「ちょっとこのひとサイテーなんですけどー!?」などと、タカハシを指差して、女子らしくまわりを味方につけようと訴えるように言い、
「きたなくていいですゥー!大人はだいたいきたないんですゥー!」と、四つんばいのままあごをつきだして吠えるタカハシ(27)。「だからおまえビードロ以下なんだよ!」
「はぁー!?ムカッつくこのカメレオン!」「うっせ!だせえパンツ履きやがって!」
「くっ!?はぁ?!パンツ関係なくない?!」「おまえだってヒトの顔どうこう言ってんだろうがこのダサパン!若いから見れてるだけだぞ!」
「・・・・・・・・・はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ?!」と、目をみはって叫び返すサキちゃん。
くくく、ハハハ、と、どこからともなく笑い声があがり、
「逆にダセえパンツ見せられてオレ追い討ちなんですけどー?!」と、さくらんしているタカハシ(27)。いっこうに立とうとせず、自分の言葉にちょっと笑って、「だいたい、 きったねえのは、俺だけじゃなくて、 お前のパンツもだろうが?!あぁ?!」と、小学生並みのボキャブラリーを発揮する。
「うぅ!」と、その小学生並みの悪口を真にうける、怒り心頭のサキちゃん。手をプルプルさせて、「もう怒ったから!おこりましたからわたし!」と、右手を持ち上げ、ぎゅっと、こぶしをつくり、「おまえ泣いてあやまってもぜったいゆるさないからな!」
「やってみろよコラなんかしらんが!あぁ?こら!タコ!こら!あぁ?!」と、
いきおいで女子高生を挑発する、
住所不定の四つんばい、タカハシ(27)。
「オリンパス・テノールそこでやってみろよこら!おあ?!あぁ?!こっちゃあなあ!家ねえ上に!三百万もねえんだよ!やってみろこらオリンパステノール!オリンパスやってみろおら!」
「もおおおあぁーーーいちいちむかつくこいつううう!オリンパスオリンパスほんとにいいいいいいいい!」と、サキちゃんは涙目になりながら叫び、
「やってみろおら!こいや!」と混乱しきってくりかえし吠えているタカハシの声を聞きながら、
「もおおおおおおうっさいうっさい!」左手であたまをくしゃくしゃしようと、髪に手をやって、
唐突に、
「「
と、両者、同調して、妙な偏頭痛に襲われて、頭痛薬のCMなみにつよく目をつぶって眉を寄せ、声を発して、身をすくめている。
じんと、背すじから首にかけて、痺れに似た感覚にさいなまれた、
半瞬後。
あたりの喧騒が。
ぱたりと、やんでいる。
サキちゃんはがく然として、
「・・・・・・
と、ちいさく、つぶやいている。スカートのポケットからスマホを引っ張り出して確認すると、埼玉能力者開発協会からの移送に関する事後通知が届いており――――――、
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