一話 Bパート・チャプター9/イタリアの種馬、的な
「先ずは彼女!」と、老紳士はタカハシを無視してサキちゃんに手を向け、「この
「はぁ、」半笑いのタカハシ(27)は、よく言うわ、と、肩を落とす。
ちらとサキちゃんを見ると、照れているのか、肘を抱いて足をくんだまま、目をつぶって、口もとやあかくなったほほをヒクヒクわなわなさせてシャルにつつかれている。
「そしてとなり!」と、老紳士は続ける。「
ウォー・マシンて、TRFまじってるし、と、タカハシ(27)は思うが。もう、あきらめて苦笑している。
ちらと横目にシャルを見やると、
このノリが平気なのか、満面の笑顔でこちらを見て、「ハーイ!」と、イクラちゃんボイスで返事をし、ピースサインをちいさく、ちょきちょきしている。
「続いて、彼女だ!」
名を呼ばれて、ヨコイ・チカさんが、小さく鼻をならして口もとをゆがめて笑い、
いまんとこコノ人(の能力が)、いちばんいやだな、と、タカハシ(27)は思い、なんにせよ、つっこみどころが多すぎてわらうしかないので、かすかにふるえた吐息をもらす。
「さらに彼!」と、老紳士が細身の男を手でしめし、声をはりあげる。「水の
「フュー!」と、甲高い、高音すぎてすかすか、カッスカスの口笛がなり、どこかあわれみにみちた、なま温かい拍手が女子三名から送られ、タカギ・リョウスケはまったく意をくまず手をあげてへらへらこたえ、
相変わらず棒立ちのタカハシ(27)は、タダの芸達者な人じゃねえか、なんだよシー・ブリーズって、だいたいさいたま海ねえし、つーか
「そして、最後になるが、」と、老紳士がしゅくしゅくと、顔をそむけて口を開き、パーティー然としたそうぞうしさが、止み。髪のほつれをなでつけながら、「サイタマ生まれ、根岸育ち、悪そうな奴はだいたい友達――――――、 ではなかったが、いまでは、おそらく。このサイタマ一、 悪い男。」
「嫁に二回逃げられてまーす、」と、シャルが口を挟むので、
「嫁の事は言うな!」と、すばやく口をはさみ返し、
咳払いを一つして、
「このセブン・ネイション・アーミーズの創設者にして、代表をつとめさせてもらっている。 立ちはだかる者を、この身に授かりし暗黒の能力で、ヒュプノスとタナトスの境界へといざなう――――――、知を得たケモノ。」
目をつぶって、うなだれて、
ゆるやかにかぶりをふり、
「あの、代表?あんまり強いことば使うと、その、弱く見えるらしいですよ?」と、心配してふあんそうにサキちゃんが小さな声で気をつかうが、
「シィーーーーーーーーーーッ!」と、すぐさま、じぶんのくちびるのまえに指をたてて、
だまって見守りにてっすることにしたらしい姿を、
ちらと見て、
にやりと笑みを浮かべ。
「このゆがんだ世界の
「ランキング・オブ・サイタマ、47位!」と、高らかに宣言したかと思えば、
「――――――抱腹絶死。 クレイドル・ラフィング、
モリサキ!」
と、ひじょうに悩ましげな、体幹の軸にぶれのない、ヴィジュアル系を思わせるナルシスティックなポージングで、自己紹介し、
おー!ピュヒー!と、声や拍手があり、
「アイツ、名マエ?ラッシー言いまスネ!」と、シャルが笑いをこらえながら指をさして補足する。
「言うなよ!!」と、すごくしゅんびんになげく、モリサキ・ラッシーに。
どっ、と一同が笑いを返し、
「ら、らっしー! さん、」と、肩をふるわせながら、ガマンにガマンをかさねて、復唱するタカハシ(27)。「すごい、ハイカラな、 またずいぶんと、
ほつれた髪を気にする余裕がないのか、ゴヤの絵画をおもわせるポーズで絶望的に立ちつくしている
ついにこらえきれず、ぼほふ、と噴きだして、顔をそむけている。
「ラッシーさん、」と、繰り返し、
また一同が、先ほどよりはいくぶん、しのんで笑い、
ひそやかにそれぞれ、顔を伏せて肩をふるわせる、時間があり。
モリサキが、会衆にむけて歯をくいしばって。
「たのむから名字の方をとってくれタカハシ君!」たのむから!と、誰に言うでもなく繰り返し、面々を見まわして、「笑うな!おまえたちは!何回目だ!何回も聞いてるだろ!」などと、切実にうったえる、いい
「いや、いいんじゃ―――」「名犬だよ」と、タカハシをさえぎり、ジャガー柄のチカさんがすっと口を開く。
一瞬の空白のあと。
弾かれたように、笑いがおこり。
――――――ラッシーは無いわさすがに、ひどいわ、インドカレー屋さんかよ、などと、話題が名前批判とあわれみにうつり、「親、両親どっちも好きだったらしいの。 ラッシー、」という、チカさんのねばっこいイラナイ豆知識に、
また笑いがおこり、
五分もたたぬうちにいじけきってすみの方でヒザをかかえて、床に『の』の字を書きはじめたモリサキにそれぞれが声をかけ、あやまり、はげましていると、
シャルが、
「don’t mind!ラッシー!がーん・バッテコ! ヘイ!ばってコッ!ラッシー!ヘーイ!」と、自分の胸の前で拳をにぎってまぜっかえしたので、
また一波乱あり、
完全におちつきをとりもどしたのは、約十数分後である。
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