一話 Bパート・チャプター4/ハラワタミッキーマウス




「地元デわァ?キンパツJK言われてましター!」と、ちょっとほこらしげに、助手席に振りかえって、シャル。「知らないオトコのヒぃトがー?ものKAGEから!ショチュー?いぱい写真とてましたネ?!」



「ね!って言われても、 あぁ、まぁ、」と、みゃくらくないながらも、困って同情する、家なき子タカハシ(27)。



「わからない思いマシタカ?!」と、手を差し出すシャル。


「俺にキレんなよ!」と、ドアへ身を引きながら笑っておうじるタカハシ(27)。




「Internetデ!くろい目センはいった自分ノ写真みるキモチワカリマスネ!?」と、シャルは、急にもろもろ思いだして、怒って言う。「ご覧のアリサマヨ?!」




「そう言われましても、」と、タカハシ(27)は、すなおに困惑して目をおよがせ、


 ちらと、となりを見ると、




「んー!」と、わざわざまたサングラスを下げ、瞳をのぞかせ、あいらしくうなって、眉を寄せてどうやらわりとまじめに怒ってくるので。




 やむなく、「あの、なんか、その節は、」と、地球上・全人類・男性を代表して――――――、


 胸のうちで、なんでいまオレだよ、と、目いっぱいの不服をこぼし、首をかしげながら――――――、



「ほんと、こちらの、そのー、不徳のいたすところで、まことに、 もうしわけ、  ありません、でした」訥々とつとつと、口を開いて、



 横目にちらちら、シャルをうかがいながら、フロントガラスへおそるおそる、くりかえし、ちいさく頭を下げている。





 じーっと、穴があくほど、見つめられたあと。




 信号が、青に変わり。


 前の車両が動きだすので、キャデラックも、続いて発進し、




 前に向き直られながら、ことさらめいて、ためいきが吐かれ。




「杉タコっとワァ?もういいカ!」症がナイ!と、ひとりでシャルは、なっとくして、「生姜night!」リズミカルに小きざみにうんうんうなずく。




 何度目かわからないTake On Meのサビを聴く。



 数秒の、ちんもくののち。




「じゃ謝らすなよ!」と、半笑いでつっこむ、タカハシ(27)。




 あははー、と陽気にシャルがおどけて笑う。「タカハっしワぁ?Maybeソコソコ?いいやつデース!理由もないのにアヤマリまーす!」




「そこそこて、」と、ぼんやり笑って突っ込みながら、車窓に眼をむけ、とっぴょうしのないやりとりにけだるさをおぼえたこともあって、見なれない、外環がいかんぞいの景色に、意識をなげる。





 散発的な会話のつぎほが浮かんでは消え、車外でまきちらされているTake On Meと、シャルの鼻歌だけがしばしのあいだ、空間にただよい、順調かと思われていたドライブが、夕暮れどきこうれいの渋滞につかまりだして、間も無く、陽が落ち切り、


 高架下こうかしたの、人口の照明にてらされながらの立ち往生が、たびたび繰り返され、足取りが、遅々ちちとして進まなくなったあたりで、




「これさぁ、」と、タカハシ(27)は、なにげなく口を開いて、


 運転席でひまそうにしている、シャルへと眼をむける。


 取ったサングラスの弦のさきを唇にあてて、のんきにしている。


「どこ向かってんの?」




「んー?」と、リラックスしきって、たずねかえすシャル。




「いや、 どこ行こうとしてる?」と、いまさらながら、不安を半笑いでごまかすタカハシ(27)。




「おー! ジムショデース!」と、シャルは笑んで答える。「タブーン、」言いながら、ちらと、インパネに埋まっている大仰なデジタル時計を見やり、サングラスを胸のポケットに引っ掛け、「今cry奈良?みんなソロってマース!」




「あぁ、 そう、」と、相づちを打ちながら、



 ジムショ、ミンナ、と、言葉が頭をぐるぐる回り、意味をかえりみるうち、


 せんこく、長谷川さんに喰らわされた『』によって雪まみれになったことを、思いだして。



 タカハシ(27)は、急に不安定になる。「なに、されんの?」

 



「ナニモしィませーん!タカハシやヨー!」と、よるのお店で接客するフィリピーナのように手をふって苦笑する、シャル嬢。「そこでタカハっシわぁ?われワレに保護サレテー?いいようにサレマース!」




「その言い方さぁ、やぁめぇてよ、まじで、」と、頼みこむいきおいで、釣られて苦笑するタカハシ(27)。「だいたい、イイようにされるってなんだよ、」




「ダイジョブデース!オナカに?mikiマウ?入れタりシーマせーんシ?バラされたりぃ藻?しませーン!」あははー、と、シャルが笑う。




 ゼンゼン笑えねえわ、と、タカハシは胸のうちで答えている。「あぁ、あはは、」




「あはは、」と、シャルが笑い。「ソレはsort、タカはーシッ?」ちらと、視線を向けてくる。




「なに?」と、小さく笑って、窓辺に肘を突いて頭を支えるタカハシ(27)。




 車が走りだし、エンジンの鼓動で、車体がふるえる。




「あなた、サキを泣かしマシタネ?」と、おさえぎみに、シャルは言う。




「え?」とタカハシ(27)は声を発して、運転席をみやっている。



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