一話 Aパート・チャプター3/凍狂もんが
刹那的に視界が歪んでぶれたように思え、
半瞬間後、
ヒトの流れが戻っており、あれ?と思うがとりあえずどこかで休もうと、二度と周辺を歩けなくなるのを覚悟して、ロータリーにある――――――ドトールかマックか、けちくさくも一瞬迷って、
きわめて安い見栄をはってドトールへ入り、
カウンターにて、「とりあえず、アイスコーヒー、あのー、中くらいのやつと、」ちらと、隣のサキちゃんを見ると、
ほのかに泣き止みだしており、「にがい、の、や、だ。」とメソメソしゃくり上げながらソコはハッキリ言ってくるので、
「ココアの、冷たいののおっきい奴で、」と、
いぶかしむ店員に注文し、料金を支払って、怪訝そうにされながらも、間も無く出された飲みものを受け取って、奥の席に着き、
「とりあえずのみなよ」と、促して。
沈黙のまま飲みものをすする時間が続き、
BGMの寒々しい軽快な洋楽を聴くうち、
やっと落ち着いたのか、
時々しゃくりあげているものの、サキちゃんが顔を上げて、窓の外を眺めはじめるので、
「あのー、」と、声を掛けてみる。
「なに」と、もんくありありの泣き腫れた目で言う、サキちゃん。
「いや、訳がわかんないんだ、」と、タカハシ(27)は言う。「さっきっから、ずっと。なに?これ」
「あなただって――――――!異能の持ち主なら、わかってるでしょ?!」と、キレ気味にサキちゃん。
「いやもう、ごめん。そっからわかんないんだわ」と、タカハシ(27)は笑う。
ん?と、サキちゃんが首をかしぐ。
「なんか、 要領を、得ない?」と、
自問も兼ねているのか、怪訝に言い、肘を抱いて、口許に手をやる。
「いや、ほら、勝負がどうこうとかさ、」と、へつらい顔で注釈し始めるタカハシ(27)。「あとランクがどうこうとか、あのー、ほら、能力がどうのとか、なんだっけ?ぜったい?」
「もういいのそれは!」と、サキちゃんが紅くなって怒る。
タカハシ(27)はへらへら笑い、「オリンパス!テノール!だっけ?」と、しぐさ込みで悪ふざけし、
サキちゃんがまた涙目になって唇や肩をわなわなさせ始めるので、「あーいやごめん!」ごめんごめんごめん!と、繰り返しあやまってみるものの、逆効果なのかめそめそされてしまい、落ち着くまで時間を有し、
結局、
追加でおおきなチョコチャンククッキーを買い与えることで、落としどころとしてもらい、多少のご機嫌を取って、
「あのー、」と、再び口を開く。
「あに?」と、眉を怒らせて、鬱陶しそうにサキちゃん。「またいじめるの?」クッキーに口をもごもごさせて言う。「かっこわる、いじめ」
「いや、いじめとかじゃなくてさ、」と、タカハシ(27)は苦笑して。「説明がほしいんだ」と、訊ねている。
サキちゃんは、もごもごを一旦とめて。
呑みこんでから、「タカハシは、ランク、四十位なんでしょ?」と、訊ねてくる。
「いや、なんつーか、」眼を泳がせる。「それもよくわかんないんだ」
「わからない?」と、完全に疑問に憑かれた様子で言う。「自分のランクが?」
「いやそれ、把握してる奴の方が少ないっしょ?そんなの、」と、笑って返す。
「ちょっとまって、」と、サキちゃんは言い、何か、考え込んだ後。
なにかに思い至り、はっとして。
瞬きしながら、「あなた、どこから来たの?」と訊ねてくる。
「南大塚だけど、」と、タカハシ(27)は答えている。「元はっつーか、実家は清瀬の方なんだけど、」
「清瀬?!」と、テーブルをぶっ叩いて立ち上がりながらサキちゃんは叫び、
店内が静まりかえり、視線という視線が、集中する。
「ばかな、」と、サキちゃんは驚いて、呟いている。「西凍狂でしょ?!」
「いや別に、そんな珍しくも、」と、タカハシ(27)は苦笑して自己弁護する。
ざわざわ、ひそひそと、店内が騒然とし始めているので、視線を向けると、客も店員も、みな揃って、さっと目を逸らすので、なんだよ、と、違和感に苛まれながら、サキちゃんに眼を戻せば。
唖然として、立ちつくしている。
「なに?」と、タカハシ(27)は、怖気混じりの半笑いで訊ねる。
沈黙があり。
やっとのことで、呼吸を思い出したように、サキちゃんが息を吸い。
「凍狂の人間が、どうして、 サイタマにいるの?」
と、怯えて口を開く。
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