第5話 徴兵
村の町長バロックの家の広場に、十五歳以上の健康な男子が集められていた。
フリーダが供物に選ばれたように、男子たちには徴兵の通達が来ていたのだ。
オルヴィスとガードリアスも素っ裸になり一列に整列している。身体検査があるためだ。
「オマエたち! 我が国にその身を捧げる覚悟はあるかッ!」
首都から派遣されてきた軍人が怒鳴りつけるように言った。
「ありますッ!」
「あるでございますッ!」
少年たちがそれぞれ応える。軍人は一人一人値踏みするように見て回った。
「そこのオマエ。いい身体をしているな。職はなんだ?」
オルヴィスのことであった。
「へ? オレですか? 俺は木こりをやっています」
いきなり聞かれて、虚を突かれた。
「木こりか。なるほどな。いい兵士になれよ」
「すみません」オルヴィスは上目遣いに言う。
「まだなにかあるのか?」
「徴兵って、拒否できたりしないんスか?」
隣にいるガードリアスが肘で突いてくる。
「バカ、オルヴィス。ダメだよ。拒否なんてできないよ。中央政府からの通達なんだから」
「拒否はできんッ! これは殿御みずからのご命令だ!」
「…でも、オレ、持病があるもんで、戦場では役に立たないかもしれないスよ」
オルヴィスは、あらかじめ口の中に含んでいた袋を噛みちぎった。激しくむせ込んだ。
「ほら、ね。オレは、病弱なんス」
オルヴィスは、子供の頃、森の中で満身創痍の落武者を見たことがあった。その落武者は追っ手に発見されて、命乞いをしたものの、追っ手によって無残に殺された。
その残酷すぎる姿を見て以来、戦争を否定している。戦争になど行きたくない。どんな理由があっても行きたくない。人を殺したくなかった。自分も命令によっては、あのような卑劣な行為をやらざるをえない状況になっても、命令をあっさり無視してしまうだろう。上官の命令が絶対の兵士には絶対に向いていない。村のガキどもはよくチャンバラごっこして遊んでいるが、本物の戦闘の惨さをガキどもは知らないのだ。ガキの遊びとはいえ、たまに殴ってやりたくなる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます