第2話 いきなりアイドル

「東京! キター!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 私は東京に舞い降りた。

「おお! ここが東京か! テレビで見たとおりだわ!」

 ビルばっかりの東京に驚いていた。

「よし! アイドルになるぞー! おお!」

 不安よりも希望の気持ちが強いので怖い物は何もなかった。

「でもどこに行けばいいんだろう?」

 アイドルになる方法は知らなかったので悩んでしまう。

「そうだ! スカウトされよう!」

 良いことを思いついた。街を歩いていて、スカウトされるテレビを見たことがあった。

「そうだ! 渋谷に行こう!」

 渋谷はテレビでも毎日、街の様子が放送されるので私でも知っている。

「切符を買わなくっちゃ。」

 電車に乗って渋谷に移動した。

「初! 渋谷! キター! スゴイ! ビルばっかり!」

 初めて渋谷にやって来た。田舎と違いビルがあるので驚いた。

「ハチ公象だ! スクランブル交差点もある!」

 田舎者丸出しの私だった。

「クスクス。」

 周りの意地悪そうな渋谷少年少女に馬鹿にされても、田舎者は気にしないというより気づかない。

「よし! 駅まで立っていればスカウトされるぞ!」

 それから私は渋谷の駅前で芸能事務所のスカウトに声をかけられるために立ち続けた。

「アホー! アホー!」

 夕方になりカラスが鳴いていく。

「お腹空いた。」

 夜になり終電もなくなる。

「お嬢さん!」

 その時、チャラそうな男の人に声をかけられた。

(キター! スカウト!)

 私の心は今日一日の努力が報われたと喜んだ。

「はい。」

「終電無くなったけど、家出少女?」

「いいえ! 私、アイドルになりたくて田舎から出てきて、スカウトされるのを待っているんです!」

「え・・・・・・。」

 私の大迫力の純粋さにスカウトのチャラい人も一瞬、怯んだ。

「なれるよ、アイドル。」

「本当ですか!」

 アイドルになれると聞いて私のガードは下がった。

「お嬢さん、名前は?」

「渋野ピヨコです。」

「ピヨコ!? 独特な名前だね。長いから、略して渋子にしよう。今日からお嬢さんの名前は渋子だ。」

(おおー!? これはスカウトさんが私の芸名を考えてくれたのね! やったー! 私はアイドルになれるんだ!)

「はい! 私の名前は渋子です。」

「じゃあ、アイドルにしてあげるから、ついておいで。」

「はい! どこまでもついていきます!」

 チャラいスカウトの男は渋子を案内しながら電話をかける。

「あ、俺です。新人の女の子を連れていくんで、10万円用意しといてくださいね。」

 渋谷は危険な街なので純粋な田舎者は来ない方が良い。

 つづく。

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