初恋

@sennindayo

転校生

 にこやかに笑う姿は、輝く太陽のようであった。彼女は、笑って自己紹介をした。僕だったら、転校初日で、得体の知れないクラスメイトを目にして、にこやかに笑うことはできないだろう。その印象から、僕は彼女と仲良くなることは、決してないと確信していた。あいつが、あんなことを言うまでは。

 お昼休み、転校生の周りには、人だかりができていた。僕が彼女の、笑顔に引きつられたように、クラスメイトにも、そのように映ったのだろう。そんなことはどうでもいい、と言わんばかりに、僕が小説は読んでいた。やかましい声が僕の名前を呼んだ。

「春、彼女、本が好きなんだって。図書委員でしょ。図書館案内してきてよ。」

幼馴染の、やかましい声が僕を小説の世界から、連れ去る。転校生の周りには、いまだに女生徒が3・4人いる。あいつだけならまだしも、そいつらまで、僕に案内しろよ。みたいな目線で、僕を見ている。ばかの、声の大きさで少し、教室の半分くらいの視線が、僕のところに集まっている。ここまで注目を集められては、僕は断る術を持ち合わせない。なので、僕は転校生の元まで向かって、一言言った。

「昼休み後少ししかないから、放課後でいい?」

彼女は、こくんとうなづいた後、お願いします。とぺこりと頭を下げた。彼女もかわいそうに、自分の意思とは関わらず、周りに1日のスケジュールを決められて、と同情をしていた。幼馴染は、僕の肩をバンバン叩いて、任せたぞ。と誇らしげに微笑む。あ〜うぜぇ。

 そんなこんなで迎えた放課後。律儀に、彼女に前に立ち、一言声をかける。

「それでは、図書館に案内しますね。」

図書委員とは思えない、同級生とも思えない、ホテルの部屋を案内するかのように、呟いた。彼女は、僕の自信たっぷりの顔を見て

「君って変わっているね、なんて言う名前なの?」

「新井章と申します。」

「私は、錦華江と申します。っていっても、自己紹介で話したか。」

そう彼女は言って、得意のスマイルを浮かべた。かわいい笑顔だ。

「新井君ご案内お願いします。」

「それでは、向かいましょう。」

柄にもないことをしているのはわかっている。なぜなら、周りの女子は、新井君ってそんなキャラだったんだ。とか呟いているし、周りの男子も、新井ってあんなことできるんだ。と陰口を叩いている。なんで、そんなにテンションが高いかって、図書館案内してくれなんて女子少ないし、その女子がかわいくて、笑顔が素敵。ウキウキしないわけねぇだろクソが!ということで、昼休み明けから、放課後の間の授業は、どこを案内しようか、考えていた僕であった。

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