宿命の邂逅…転生者の集い

「やはり孤独を感じていらっしゃる方が多いのではないでしょうか」


 エビ──こと、ダシデルは歩きながら語り続ける。


「無理からぬことと思います。突如として異世界に放り出されたのですから」

「そうかな……」


 サーロは誘われるままにダシデルについてはきたが警戒を解いてはいなかった。

 容姿で判断するわけではないが、明らかに人間ではない相手である。

 しかし、それを指摘すれば傷つけてしまうかもしれないという危惧もあった。

 お前……エビ?と言われて誰もがいい気がするわけがない。

 それは醜い差別意識の現れである。

 さりとて、人間と同様に扱っていいものなのだろうか。

 ひょっとすると彼は人間よりもはるかに高等な生物である可能性も否めず、その場合は人間と比較すること自体が無礼に当たるかもしれない。

 そもそも人間が優れた生物であるなどというのは一方的な思い上がりなのだ。


「傲慢は偏見の友だ……」


 サーロは自らを戒める言葉を呟く。

 それでも、ザリガニは顔の中心から放尿をするという話を聞いたことがある。

 その聖水を浴びるわけにはいかないということで、用心深く間合いをとって歩いた。

 ダシデルは続けた。


「ワタシはそのような人々を集め、団欒の時を過ごしていただくことを思いつきました。何も、構えることはありません。郷里を同じくするもの同士、そこでかつての世界を懐かしんだり、友好の儀を結んだりと、和気藹々と過ごしていただければ」

「何のために?」

「ワタシは異界に興味があります。そこにはおそらくこの世界よりもはるかに発展した文明があるのでしょう。しかし、ワタシにはそれを上手く聞き出せるだけの知識がありません。なので、キミたちが語る内容をつぶさに聞かせていただき、そこから異界の叡智に想いを馳せることをお許しいただきたいのです」

「勉強熱心マンということか!?」

「趣味です。純然たる趣味なのです」

「異世界マニアか!?」


 表情から感情を窺い知るということができないので、ダシデルの言葉をどこまで間に受けていいのかはわからない。

 しかし、自分以外の転生者という存在には激しく興味を惹かれた。

 果たして、どんな人間なのか。

 いや。

 それよりも。

 サーロと同様にやはり肉の部位の名前なのか。


(カルビとか、ロースとか)


 考えていると腹が鳴った。

 そして、自分が空腹であることを思い出した。


「お食事はご用意しております。心置きなく飲み食いしてください。立食形式で、連絡先の交換も自由です。ステータスカードにステータスを書いて……」

「婚活パーティーのようにも思う!?」

「第一印象が大事です」

「年収には自信がないが……」


 だが、タダ飯というのはありがたい。

 サーロのテンションがやや上がったところで、ダシデルが立ち止まった。


「着きました。こちらです」


 そこは意外と立派な佇まいの一軒家であった。

 この世界では珍しい、長方形を積み上げたような幾何学的で先鋭的なデザイン。

 そして、汚れ一つない、白く、艶やかな光沢を放つ壁。


「どうぞ、中へ」

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