冒険者って何?

報告:作者寝込んでたので色々停止してました。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 空いている受付に近づき、伯爵から新たに譲り受けた家紋入りの指輪を見せ、話を始める。


「伯爵から話は通っているかと思いますが、今日は冒険者としての登録を行いに来た。ルベドと申します」


「これはこれは、お話は既に伺っております。どうぞ、奥の応接間でお話を」


「ああ、それと……あちらの灰色の髪の女性は私の相方です。可能な範囲で宜しいので便宜を測って頂ければと。それすら必要無いぐらい強いですが」


「承知しました……こちらへどうぞ」


 そう言って応接間に案内される。装飾品などは程々と言った所か、悪趣味ではないしそれなりに洗練されている。ふむ、悪くない。


「して、本日の要件は冒険者への登録でよろしいでしょうか?」


「ええ、その通りです。それで、いくつか確認したい事がありまして……冒険者にはクラスがあるそうですが、最も手っ取り早く上げる方法を教えていただきたくてね。こちらはそちらの無理難題を処理して、手早くクラスを上げたいと考えています」


「無理難題の処理、ですか」


「ええ、概ねの事であればどうとでもなります、このように」


 そう笑い、魔術を行使した。


◇◇◇


 時間とは有限だ。必要な事であればルール破りも多少は行う。今回はそれを行う必要があったというだけだ。


「あまり精神操作型の魔術は使いたくないんだが」


 そう言って


「……使ったのか」


「ああ、ランクを上げる最短ルートを教えてもらった。採取、討伐、これらのリストを行えば効率的にランクを挙げれるだろうよ」


 組合長から直接聞き出した内容のメモ書きをペラペラと揺らしていると、少し不機嫌そうな表情で此方を見るジーナ。


「良くはないな」


「そうだな。だが、戦争は既に始まっている。後手に回り、遅きに失するぐらいならばというヤツだ。こんな稚拙な手しか取れないのは、己の無能さに辟易しているが」


「雇い主の伯爵とやらに、金を用意してもらえばなんとでもなるんじゃないのか?」


「一理、いや二理ある。だが、この行動には先の千理が絡む。それに、安易に力を借りて本当に必要な時に借りれないのは良くないだろう。外から見れば、小さな一歩に見えるがな」


「ふむ、少しだけ理解はした」


「納得はしなくていいさ、納得など精神が見せるまやかしに過ぎない。"あるがままを受け入れよ、だが目前にて起きた事は理解せよ"だ、錬金術には納得という工程は必要ない、理不尽だろうとそれが結果ならば受け入れて研究する必要がある。それだけだ」


 やや夕闇が空から落ちてきた。人通りも既に少ない、それと。


「4人、それなりの使い手だ。人よけの魔術を使っているな」


 どうやらジーナも気づいているらしいが、なにやら剣呑な雰囲気のヤツが6人ほど隠れている。うまく魔術で隠蔽しているようだが、ジーナと俺が相手じゃ分が悪いだろう。


「肉体が万全か実戦で確認してくれ、キツそうならサポートを入れる」


「何処で恨みを買ったんだ?ともかく、承知した」


 俺の手により改良が加えられた聖剣を抜き放ち、一息で42の光の刃を周囲に放つジーナ。……これをあの時にやられてたら普通に死んでたな。


 光の刃が飛ぶ鳥のように孤を描き、建造物を迂回して襲撃者を逆に襲うという暴挙を見せた。


「それ曲がるのか?」


「あの重くなる魔術がなければ、曲げたり斬撃の数で押し切ったりはできたんだがな」


「そりゃ強い、この程度の相手だと勝負にならないだろ」


 飛ばした斬撃が屋根の襲撃者を、此方に向けて放たれた矢ごと切断する。腹部から少なくない血を流して落下する襲撃者。そのほかの襲撃者は、隠れていた木箱や壁が刃で木端微塵になり間抜けな姿を晒している。


「身元を確認したい。すまないが、可能な限り生け捕りにしてくれ」


「ネクロマンサーの術もあるんだろう?」


「無駄な殺しはしない主義でな、彼らを君と同じ目に合わせたいなら殺しても良いが……」


「善処はするが絶対じゃないぞ、それに剣の切れ味が以前より鋭くて加減がし辛い」


「まぁ、最悪死体に聞けば良いだろ」


「それもそうか」


 ジーナが身体強化を行い、高速移動を開始する。流石に前の狂った移動速度は、流石に後方からのバックアップありきではあったらしいが、それでもかなりの速度だ。

 あの飛ぶ斬撃をフェイントに使いながら連続攻撃を加えられては、剣士だろうが魔術師だろうが対処は困難だろう。


 攻撃方法はシンプル。だが純粋に能力が高い為、真正面から突っ込んでも大体殺せてしまうのが恐ろしいな。


 屋根にいる複数の相手に対して刃の牽制を飛ばし、手出しを行えない状態を上手く作っている。というか飛ばした剣戟を盾と目くらましに使いながら、平地の相手を上手く切り刻みに向かう手筈という事か。


 高い魔力量、優れた剣術と技術、英雄と呼ばれるだけはある。俺のように小細工に全能力を振り分けないと、格上とマトモに戦えない者には眩しい戦闘方法だ。


「ッ、ルベド!一人殺したかもしれない!間に合うなら治療を!」


「あー……込める魔力3分の1でいいぞ」


「少し深く切りすぎた、治癒を頼む!」


「承知した」


 トントンと足を響かせると、周囲に円陣が展開され漂っている魔力が吸い込まれる。


「周辺に無差別回復魔術を展開した。ただし、回復の際に凄まじい激痛が走るように工夫してるから、加減しすぎて深手を負うと気絶するほど痛いぞ」


「ガアアアァァァァァァァ!アアアアァァァァッツッツ!!」


 屋根上から絶叫が聞こえた後、ドサリと落ちる音。周囲からわずかに息を飲む声が聞こえた。


「ルベド!?アレ本当に大丈夫なのか!?異端審問でもあそこまでの声でないぞ!?」


「えーあー……ジーナが当たらなかったら問題無い」


「いや、相手側は!?」


「丸一日寝込んで二度と回復魔術を受けたくなくなるぐらいだ、安心して切り刻んでいいぞ!」


「切り辛くなる事言うなよ!?」


「いいんだよ、切っても死なないから!」


 さて、英雄の力を改めて見せてもらおうか。

 

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