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 その後も俺は大会で勝ちまくった。相変わらずプライヴェーターだったが、久里原の店の親会社をはじめとしてスポンサーがいくつも付き、経済的にはかなり楽になった。といっても、俺の愛車は相変わらず銀のカプチーノだ。


 そして俺は、とうとう全日本選手権に参戦することとなった。今度も場所は、もはや俺のホームと言えるイオックス・アローザだ。


 さすがに全国大会となると強敵がひしめいている。それでも強力なメンテナンス体制に支えられ、俺は順調に勝ち抜いていった。


 そして、決勝戦。相手は「SEVEN」とかいうファイトネームの、関西出身者らしい。てっきりロータリーエンジンを搭載したアレなのか、と思っていたが、「SEVEN」のクルマを見た瞬間、俺は全てを把握し嘆息する。


「そっちかよ……」


 ヤツの車は、ケーターハム・スーパーセブン。


 英国車だ。エンジンに最小限のボディとタイヤが付いた、まさにこの競技のために生まれたようなクルマ。


「アレは黄色ナンバーだな。160だ。エンジンはこいつと同じだぞ。上手くいけば互角の戦いになるかもしれん」


 セコンドの久里原が、俺のクルマを見ながら言う。


 確かにスーパーセブン160のエンジンは、スズキが提供しているK6Aだ。しかし、カプチーノに載っているそれよりも新しく、メーカーの熟成が進んでいる。別物と言っていい。


 しかも。


 カプチーノの車重が700kg位なのに対し、スーパーセブン160は500kgを切っているのだ。200kg以上も軽いことになる。


「走る」ことと同等、場合によってはそれ以上に「止まる」能力が要求されるこの競技では、車体の軽さが全てと言ってもいい。馬力を上げればスピードは出るだろうが、止まりやすさ、というものは単純に質量だけに依存する。だから「ドッグファイト」には大排気量のスポーツカーは一切出てこない。スーパーセブンももっと大排気量のモデルがあるはずだが、ヤツがあえて一番馬力が小さく一番軽い160を選んだのは、そういうことだろう。


 間違いなく強敵だ。俺は気持ちを引き締めた。


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