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 航空自衛隊の戦闘機パイロットだった俺は、事故で網膜剥離を起こしてしまい、辛うじて失明はしなかったものの、これ以上過大なGがかかる環境では再発は免れない、ということで除隊を余儀なくされた。そんな俺に声をかけてきたのが、学生時代の友人の久里原くりはらだった。


 自動車部だった俺たちは、当時俺がドライバー、ヤツがナビゲーターとなってオンボロの初代スバル・インプレッサWRXに乗り、草ラリーに出場して見事3位に入賞している。青春時代のいい思い出だ。卒業後俺は空自に入隊したが、ヤツは趣味が高じて某全国チェーンの自動車用中古パーツショップに就職し、今はなんと店長をしている、という。


「榊、お前ドッグファイトやらないか?」


「何言ってんだ。俺はもうどう頑張っても戦闘機乗りにはなれねえんだぜ」


「いや、地上の、さ」


「……はぁ?」


 いぶかる俺を久里原は無理矢理競技場に連れて行った。それが俺とLVSとのファースト・コンタクトだった。


 それはまさしくドッグファイトに他ならなかった。もちろんクルマにはヨーヨーやバレルロールと言った三次元的な機動はできない。だが、相手のオーバーシュート(自分の前に相手を飛び出させること)を誘い、6時方向を取り合う戦いは、まさに戦闘機同士のそれと全く同じだった。俺はいっぺんに魅せられた。これはぜひやってみたい。


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