ドッグファイターRYO

Phantom Cat

1

 202X年。


 全く新しいモータースポーツが誕生した。その名もLand Vehicle Shooting (LVS)。またの名を「ドッグファイト」という。


「クルマの格闘技」と言われるものはこれまでもいくつかあったが、本当の意味で「格闘技」と言えるのは、おそらくこれが最初だろう。というのも、これはタイムを競う競技では な い 。一対一で、殺るか殺られるか。それで全てが決まる。単純明快だ。


 とは言え、無論これは凄惨な殺し合いでもない。あくまでスポーツだ。それをそうたらしめているのが、フロントのレーザーガンとリアのセンサーである。


 この競技に出場するマシンには、車体のノーズとテールの、規定レギュレーションで決められた位置に、これまた規定で決められたガンとセンサーがそれぞれ装着される。センサーは直径30cmほどの黒い半球で、上下プラスマイナス15度、左右180度の範囲から照射されたレーザーガンのビームを検知する。互いが互いのセンサーを狙ってレーザーガンを撃ち、自分のセンサーがキャッチした相手のレーザーの照射時間が規定秒数を越したら負けである。従って、互いが互いのテールを目指し走ることになる。これが「ドッグファイト」と言われる所以ゆえんだ。


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